戦場でワルツを

 
 7月7日の七夕に「戦場でワルツを」というイスラエル映画を見に行った。
今年のアカデミー賞の外国語部門にノミネートされていた作品だ。これはアニメーションで描かれたドキュメンタリーという一風変わった手法で、1982年のレバノン侵攻の際に19歳で従軍した、監督自身の経験を元に作られている。
 主人公=監督は当時の記憶をほとんど失っており、その失われた記憶を取り戻すべく、かつての戦友達を尋ね歩き、当時の様子を聞きながら、少しづつ記憶をよみがえらせてゆく。ぼんやりと脳裏によみがえってくる、戦争の記憶がアニメーションで実に効果的に描かれている。低予算なのか、アニメーションの動きはやや荒いけど、日本のアニメションとは全く違った美意識がとても新鮮だった。
 ひりつくような暴力の感触と、突然戦地に放り込まれた少年兵達が出会う、戦地の様子がまるで地獄の辺土をさまよい歩く悪夢のように、印象的に胸に迫ってくる。どこかふわふわ空を漂っているような映像と音楽が、かえって戦争の狂気を上手くあぶり出しているように感じて、何度も鳥肌がたった。
 この作品は10月日本公開とのこと、決して明るい映画ではないけど、気になる方は是非。
 
 
c0010791_0564917.jpgちょうど、数年前に、これと全く逆の立場、ベイルートの若者が当時の戦争に遭遇する物語を描いた「West Beirut (西ベイルート)」という映画を見たことを思い出した。
 それまで、レバノンといってもエジプトやシリアと同じような、自分とはかけ離れた、乾いた遠くの国とぼんやり思っていただけだったのに、そこに描かれた主人公は私とほぼ同世代、似たような音楽を聴き、感覚も自分と変わらない。そういう生活を送っている人間が、ある日突然に、戦争の日常に巻き込まれてゆく。その日常の変化があまりにリアルで、深く衝撃を受け、レバノンと自分との距離が一気に縮まり、いつか一度行ってみたい!と思うようになった。(そして、実際翌年には足を運んだのだった。)
 この「戦場でワルツ」の中の主人公も、飛行機で数十分戦地を離れれば、何も変わらない先進国の日常が待っている。その不条理感をPILの音楽が上手く表現していた。
 
 土地には何故か強度というものがある。ほとんど人の住まない、誰も顧みない不毛の土地、何千年も人々が奪い合うようにして、神殿を築き、都を建て、血を流し続けてきた土地。そこに住む人々が背負ってきた記憶の重さを考えると、想像を絶していて、目眩がしそうになる。
 それだけ磁力の強い土地で生きるって、一体どんなことなのだろうと。

 七夕の満月の静けさが、映画のイメージと重なって、しばし不思議な気分で過ごす。
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by umiyuri21 | 2009-07-09 01:00 | 映画


旅とヨガとイラストレーション。世界と身体と脳内をめぐる旅。


by 若山ゆりこ

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