インディアン・ヨガライフ〜ケーララの村で暮らす Vol.4

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いきなりヴェジタリアン

 こうしてヨガのレッスンに通う日々が続いた。はじめのうちは数人の生徒が来たが、そのうち何故か殆どマンツーマンのレッスンが続くようになった。彼の教え方は本当に厳しく、私が「痛くて出来ないと」泣き言を言うと必ず喝が入る。
「身体を弱い子供のように扱うな、身体は自分自身だ。自分の身体を信頼せず、一体何を信頼する?自分の身体を見るな、ただ信頼して感じなさい」とまあ、相変わらずのスパルタで、「できない!」「何故できないの?」の押し問答になることも。しかし、投げ出したくなりながらも、その先に進むと必ず身体に新しい変化が起こった。それは次々と新しい自分を発見していくようで、1年前のどん底の身体に光が差し込むような感覚だった。

 
 いつの間にか週1回だけ通っていたレッスンを2回通うようになり、更には彼の別の教室にも足を運ぶようになった。すっかりヨガにハマり込んでしまったある日、突然ジョシーに「今日から真面目にヴェジタリアンになりなさい」宣言をされた。え~っとヴェジタリアンってジョシーと同じ、ヴィーガンのことでしょうか?と尋ねると静かに頷くばかり。 
 ジョシーはもう何十年も動物性の食物を一切取らないヴィーガンを続けていた。当然お酒もコーヒーも飲まない。レッスンの後、みんなで食事に行くのが常だったが、生徒に菜食を進めるような事は決して言わなかったので、私もヴェジタリアンをやろうとは真剣には考えていなかった。さすがに肉とお酒はかなり控えめにはしていたが。

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  しかしここに来て、まさかまさかのヴィーガン宣言である。
 「肉や魚をやめると身体が柔らかくなってアーサナがやりやすくなる。乳製品を取らないとさらに息が軽くなる。あなたの身体の悪いところも直りが早くなるから、是非やりなさい。」と言うのだった。
 「でも、今日からいきなりというのは無理です。実をいうとうちは夫が食事を作ってるんです。」また泣きを入れる私。「何?スミマセン私は今日からヴェジタリアンになります。自分のものは自分で作りますと言えばいいじゃないか。お前はHuman beingだろう何故他人に遠慮するのだ?」とピシャリ。「伝統的にはヨガを本格的に学ぶにはヴェジタリアンを実践することは当たり前。昔なら肉食をしている人はアシュラムの門もくぐらせてもらえなかったのだ。」とまで言い放つ。そこまで言われれば、ハイと、とりあえず答えてみるしかない。


 と、半ば強制的に菜食生活が始まった訳だが、これが実は大きな川、いや爆弾であった。まず、数週間で未だにグズグズしていた体調が劇的に良くなった。特に精神的な変化が大きかった。
 生理前や雨の日などに感じていた鬱鬱感。目覚めた時に、ああ、一日をはじめるのが億劫だという重苦しい感じ。時折夜中にうなされる嫌な夢。そして、体調を崩してからずっと微かに続いていた光の眩しさ、それが一気に軽減したのだった。何よりもあんなに苦手だった早起きが苦痛じゃなくなった。おお!食事を変えるだけで身体がここまで変わるとは。
 
 菜食をはじめて2ヶ月後、今度はクンジャラというクリヤ・ヨガ(浄化法)の一種を教えてもらった。これは起き抜けに大量のぬるま湯を一気飲みして、すぐさまそれを吐き出すという胃の洗浄方法である。最初は吐くのが本当に苦しくて、何の因果でこんな事をと半べそをかいていたが、2週間ほどするとさくっと吐けるようになった。すると味覚が敏感になり、自然に刺激の強い食べ物は受け付けなくなった。最後までやめられなかったコーヒーも簡単に離脱。

 
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 しかし食事を変えることは、体調だけでなく生活を激変させるものであった。みんなと同じ物が食べられない、今まで通っていたレストランにも行けない、友達との飲み会にも食事会にも行けない。正直、単に動物性の物を取らないという食生活の大変さよりも、それに伴って変化する生活や人間関係の方がよほど大変だった。出されるものを何でも食べる生活から、食べるものを自ら制限する生活は、かなりの自己主張の強さを要求された。レストランで動物性の物を抜いた料理を作ってもらう、中に何が入ってるかその都度確認し、出されたものを食べられませんと言って断る。もともと押しの弱い私にはこれがキツかった。しかしそんなしんどさも、ヨガをもっと学びたい一心と、体調の軽やかな変化には代えがたいものだった。去年の今頃、このまま私の身体は衰えてゆくのかと憂いていたのが嘘のようだ。


 見えない流れに押し流されるような日々が続いた。夫との関係も心なしか距離が出来てしまった。お互い自営業で家で仕事しており、毎食3食一緒に食事する日も珍しくなかったのだが、夫の作る料理を私は殆ど食べなくなり、酒も飲まずに早起きをし、ヨガの練習に精を出す。食生活を変えたばかりの当初は、人々にカムアウトして色々聞かれるのも面倒で、知らぬ間に私は今までの人間関係から自分を遠ざけてしまっていた。元の生活に戻るつもりはなかったが、だからといってこのまま自分が何処へ進んで行くのか皆目分からずに困り果てて居る時に、飛び込んできたのは冬に療養の為に帰省するジョシーと共にケーララに行き、彼の実家に滞在してヨガを学ぶという話だった。
by umiyuri21 | 2013-05-16 18:34 | ヨガ滞在記


旅とヨガとイラストレーション。世界と身体と脳内をめぐる旅。


by 若山ゆりこ

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