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インディアン・ヨガライフ〜ケーララの村で暮らす Vol.7

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村の毎日

 こうして村での日々が始まったが、それは恐ろしく非効率的な毎日であった。何しろここは本当にど田舎であった。歩いて15分ほどの場所に小さなよろず屋があるものの、まともなお店やレストランに行くにはバスで4、50分のチャンガナチェリーという町に出なければならなかった。しかもバスは一日に3,4本しかないのである。事故の前のジョシーは車を運転してあちこち出かけていたらしいが、事故後は運転ができなくなり、移動はローカルバスか、パブリックボート、またはオートリキシャー。
 
 家の近くから出るバスを逃すと、炎天下の中30分くらい歩いて他のバス停に行く。バス停に行っても時刻表が貼ってあるわけでもない、周りの人に尋ねつついつ来るか分からないバスを待つ。オートに乗りたくともこれまたなかなか来ない。こうして刻々と時間は過ぎてゆく。
 「昔この辺で誰も車を持っていなかった頃から私は運転していたんだ、今はみんなクルマを持っている、だから私はバスに乗る。」普段から時計も持たず、計画的行動にも全く興味のないジョシー先生は、少々強がりとも取れぬ事を言いつつ涼しい顔でバスを待つが、私は内心イライラしっぱなしだった。ちょっと野菜の買い出しに出るだけでゆうに半日終わってしまうのだ。


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 日々の家事もまた、細々と時間がかかる。洗濯は井戸から水を汲んできて手洗いである。(洗濯の仕方も師匠に随分しごかれた)私が庭先でバケツに水を汲んで一生懸命洗濯していると、同じようにバケツに洗濯物を沢山入れた女性たちが笑顔で目配せをしながら、私の脇を通り過ぎる。彼女たちもまた近くの運河の水で日々洗濯をしているのだ。彼女たちが洗濯物を石にパンパン叩きつける音が、一日中どこからか響いてくる。小さな家には水道はなく運河の水で、水浴をし洗濯をし食器を洗う。
 
 洗濯も面倒だったが、生ゴミの処理もまたひと仕事、庭の周りから落ち葉を集めてきて自分で燃やさなければいけない。ついつい貯めこんでしまうと沢山の落ち葉が必要になり、それだけ時間もかかってしまう。冷蔵庫もないので食品の管理も大変だ。何しろここは熱帯、虫の王国だ。食べ物の袋を一旦開けたら必ず瓶に入れて密閉しないと瞬く間にアリの餌食。ちょっとした食べ物のクズを床に落とすとこれまたアリにたかられるので、ものすごく気を使う。うっかり蓋がゆるんでいたり、不注意でアリの餌食(穀物類が危ない)になったら、大きなザルに被害を受けた食品を入れ、日光に晒すとアリが逃げてゆく。そんな慣れない作業もまた一苦労だ。その他ゴキブリ、ネズミ、巨大な蜘蛛、見つける都度に退治をする。

 
 おまけに、この家の屋根裏には何やら動物が住みついていた。夜になると天井からドタバタと激しい足音が...ネズミにしては大きい。聞けばワイルド・キャットと呼ばれるネコに似た、しかしネコより凶暴な動物がいるとか。(ワイルド・ドッグというさらに凶暴なやつもいるらしい)木をつたって屋根裏に忍び込んでそこを住処にするのだと。     
 足音だけならいいが、そいつは時々バナナを拝借したり、天井からおしっこをするのが困り物であった。時折天井から水がポタポタ落ちてくるのだ。その後始末も当然私の仕事、考えてみればここに書いたほとんどが東京ではまったくする必要のない雑用ではないか。

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 そして午前と夜に30分づつ一日に2回の停電がある。30分と書くと短そうだが、朝や夜の慌ただしい時間に停電すると結構時間のロスなのである。
 夜、電気が止まるとそれまで天井のシーリングファンに飛ばされて寄って来なかった小さな虫が一気にろうそくやランプの明かりに集まってくる。暗闇の中プワ~ンと虫達の羽音が響き渡る。聞いているだけで痒くなりそうだ。雨の後だと特にそれが多く、食事や調理中は虫が入らぬように特に注意が必要であった。いや、一日2回のレギュラー停電のみならまだいい、雨が降ると時には3、4時間、6時間も停電してしまうことがあった。

 
 インドは停電が多いと聞いてはいたし、これまでもインドを何度も旅してきたが、自家発電機のあるホテルの滞在がほとんどだったので、停電の不便さを実感したことがなかった。「停電のない日はないの?」と人に聞けば「ないよ」と笑って答える。(実際は、学生のテスト期間に停数週間電がなくなる時期ががあった。)
 今イケイケなインドと言われている一方で、まだこんなに停電してるんだなあ。ああ、インドで暮らしてみたいなんてお気楽に夢見ていた私、なんて浅はかだったのだろう。
 
 何だかんだと文句を書いてきたが、それでもこの家は立派な方で、普通の人々が暮らす家には水道すらなく、ガスコンロもない家も少なくない。頼みの綱である電気すらこんなに頻繁に止まってしまうのでは、文明生活するなって言われてるみたい。と停電に慣れない私は一人で腹を立てていいた。
 いやいやまさか、村の生活がこんなにつつましく、ゆっくりした速度で進んでいるとは。ここからムンバイやデリーは遠い世界、東京の生活などはるか彼方だ。
 
 こんなペースで暮らし、朝と夕方にヨガのレッスンをしているのだから、一日はあっと言う間である。自由時間など全くない。ほっと息をつけるのは先生の来客中と全ての家事を片付けた夜遅い時間、その時間に急いで日記を書きつけるのが精一杯、そんな日々が続くのであった。
by umiyuri21 | 2013-05-19 15:49 | ヨガ滞在記


旅とヨガとイラストレーション。世界と身体と脳内をめぐる旅。


by 若山ゆりこ

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