インディアン・ヨガライフ〜ケーララの村で暮らす Vol.9

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インドでチャイなし生活
 
 そうやって獲得した野菜を使って、日々の食事を作るのはのは私ではなく、ジョシーの役目であった。先にも書いたが彼の食事に対するこだわりはかなりのもので、奥さんの話によれば、相当な料理上手だったとか。全てがオリジナルレシピで、分量なども計ることなくその日のフィーリングで即興レシピを作っていたと言う。今はまだ、あまり複雑な料理は作れないようだったが、それでもありあわせの物を利用し、少い調理器具を使って、時にはびっくりするような調味料の組み合わせで、日々料理を作ってくれた。

 
 しかしそれは彼の言う所の「Yogic Food」で身体に負担をかけない、胃に優しすぎる料理であった。動物性の物は一切取らないヴィーガン・フードであるのは当然で、できるだけオーガニックの食材を使う。野菜なら何でも良いわけではなく、お腹にガスが溜まるじゃがいもは一切食べず、ナスやトマトも嫌った。(全部私の好きな野菜だ)
 スパイシーすぎるものは避け、特に胡椒は身体に負担がかかるといって殆ど入れない。さらに塩もごくごく控えめ。ようするにインド人とは思えない程、物凄く薄味なのだ。
 基本的に食べることが大好きな私は、ようやくありつけた食事がほとんど味のしないスープだったりすると。無性に腹立たしくなり、また悲しくなった。
「あまりにも味が薄すぎませんか?」と文句を言うこともしばしばだった。「そう?私にはこの味はちょうどいい、塩は骨に良くないから薄味に慣れなさい。ゆっくり食べれば素材の味を感じる事ができるから」と、食べる速度もものすごくゆっくりなのだ。 
 しまいには「あなたは味にだまされている。口の中だけで料理を食べてそれでおしまい、その食べ物が何処へ行くか考えた事もないだろう。」という究極的な言葉まで飛び出す。

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 ヨガの考え方の中で、エネルギーはサットヴァ、ラジャス、タマスという3つの質(グナ)を持つと言われている。サットヴァは純粋でありバランスが取れた状態、ラジャスは躍動、情熱、変化といった質を持つ、そしてタマスは暗さ、重さ、無気力。すべてのエネルギーは形を持つと、3つの性質のうちひとつが優勢になる。この法則は全ての存在に及び、ヨガを実践する人は、サットヴァ的な食事を取ることが勧められる。そうすれば自然に心もサットヴァに近づくと言う訳だ。


  サットヴァ的な食物とは、フレッシュな野菜や果物、豆類、精製されてない穀物、ナッツなど。味の濃い、刺激の強い食べ物はラジャス、タマス的な食事は心身に強く働き、時に悪い影響を及ぼす物、アルコールやタバコ、鮮度の落ちた物や熟しすぎの物も含まれる。
 ちなみにバナナを例に取ると、食べごろのバナナはサットヴァだが、熟れかけがラジャス、すっかり熟してして黒っぽくなるとタマスと、ひとつの食べものの中でもグナは変化してゆく。
 要するにできるだけ素材の新鮮でナチュラルなヴァイヴレーションが残った状態で食べろということなのだ。味付けが濃すぎたり、作って時間の経った料理は避けるべきということ。本当、ヨガを実践するってこんなに大変だったのですよ。

 
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 滞在の最初の頃は手に入る野菜も少なかったので、食事はものすごくシンプルで、正直かなりひもじかった。みるみるうちにインド人に心配されるほど痩せてきた。ヨガをしていても今日は何を食べようか、と考えている。食べ物に対する自分の執着の深さにしみじみ驚いた。
 救いはジョシーが外食が好きなことであり、外食の時ならばピュア・ヴェジタリアンに限り、好きなものを注文することができた。また、親戚や友人に食事に呼ばれる時、冠婚葬祭時もおいしい料理が食べられるので、朝からワクワクである。
  
 ケーララはキリスト教徒が多く、ノンヴェジ率が高い。アルコールに対しても寛容でちょっと良いレストランには大抵バーが併設されていた。成人男性の20%がアル中と言われるほど飲酒が深刻な社会問題にもなっていた。インドはヴェジタリアンの多い国ではあるが、ケーララではヴェジタリアンの肩身は意外と狭く、レストランも多くない。隣のタミル・ナードゥに行くと一気にヴェジ率が上がるのだが。事実、ヴェジタリアン・レストランの多くはタミル人が経営していた。
 
 しかし、乳製品を一切取らないとなると菜食のレストランでも頼めるメニューに限りがあった。何しろチャイだって飲めないのである。ドーサを頼む時も必ず「ギーなし!」ヴェジタブル・ミールスを注文する時も必ず「ヨーグルトもミルクもなしで!」と念を押さねばならない。運悪く乳製品入のおかずが多い日だったりすると、食べられるカレーがアビヤルとサンバルと、ポリヤル一品くらいだったりする。

 
c0010791_1121284.jpg その点、家庭の料理は安心だった。ジョシーはクリスチャン・ファミリーの出身なので家族も友だちもノンヴェジではあったが、招かれる時はいつもヴェジタリアンの食事を出してくれた。しかも大抵庭先で取れたフレッシュな野菜などが使われている。遠慮なしにたっぷりいただきます~!
 ケーララの野菜は熱帯らしく珍しいものが多い、巨大なウリのような野菜、ドラム・スティック、青いバナナやジャックフルーツの種をカレーに入れたりもする。ご飯代わりに食べるジャックフルーツのお団子も美味だった。
 
 また、冠婚葬祭もおいしいご飯にありつくチャンス!結婚式や法事、子供の命名式など色々な儀式に足を運んだが、どれも儀式自体はごくあっさりとしていて、その後皆に食事を振る舞うのがメインとなっているようだった。日本のようにお酒を飲みつつゆったり会食ではなく、横長に並べたテーブルにどんどんバナナの葉を敷いていき、そこにおかずやご飯を盛り付け、一気に人に食べさせる。インド人たちは大盛りのご飯をわっしわっしと手で握りしめ、ものすごいスピードで食べ、片付け、去ってゆく。 席に着いている人が食べ終わったら、全てを片付け、また新たにバナナの葉を並べ、もう一回転。これを数回繰り返す。庶民の結婚式でも一度に数百人の人に食事を振舞っていた。で、食事を食べた人々は主賓に挨拶したり友達とちょっとおしゃべりしたら、長居せずにさっさと帰ってゆく。本当にご飯を食べに来るという感じ。かくいう私も食べることだけが目的だ(笑)
 
 冠婚葬祭のミールスは、レストランの物よりおかずの種類も多く、また丁寧に作っていたから本当に楽しみだった。ただしお金持ちの行事になればなるほど、ノンヴェジ率が上がり、食べられるものが少なくなるが玉に瑕。デザートも大抵アイスクリームやケーキ、プリンだったりして。いつも泣く泣くあきらめていた。

 
c0010791_10592168.jpg 甘すぎるインドのプリンやケーキなんて貰ったって食べたくない! という人も多いかもしれないが、これだけ菜食を徹底すると、砂糖と油で元気を出さねばならず、多分暑いということもあって、甘いものへの渇望が半端なかった。昔は必ず残していたミールスの食後に出てくるパイサムと呼ばれる甘いデザートが猛烈に美味しく感じられる。これも、6割くらいの確率でミルク入りなので諦めないといけなかったが。実は師匠の見てない間に耐えられずこっそり食べてしまう時もあったのだ。(笑)唯一飲むことができたレモンティーにも砂糖をガンガン入れる。
 師匠も白砂糖は好まなかったが、ブラウンシュガーであれば私と一緒(いや私以上に)ざくざく入れていた。塩はダメだけど砂糖はいいのか?いつも若干疑問ではあったが。
  
 油っぽくて以前は注文することもなかった揚げパン、プーリーも大好物になった。お腹がすいていればドーサとプーリー、といったティファン二皿食いも大丈夫。
 基本的にいつも何か食べたいモードなので、カレーに飽きるということは5ヶ月全くなかった。そして先生の厳しい食事管理のおかげか、お腹を壊すことも一度もなかった。

 
 いやあ、インド人の味覚にかなり近づいた気がする。
by umiyuri21 | 2013-05-22 11:02 | ヨガ滞在記


旅とヨガとイラストレーション。世界と身体と脳内をめぐる旅。


by 若山ゆりこ

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