インディアン・ヨガライフ〜ケーララの村で暮らす Vol.12

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パブリック・ボートからハウスボートを眺める
 
 こうした一筋縄ではいかない生活はなかなかしんどく、つい切羽詰まって、「帰りたい」とため息を付くことも珍しくなかった。そんな中での慰めはケーララの美しい自然環境であった。
 四方八方を水に囲まれ、緑はどこまでも豊かに続いている。朝は森のあちこちから聞こえてくる鳥のさえずりで目が覚めた。木々の隙間から朝日がこぼれ、さわやかな光を浴びながらヨガをするのは格別であった。
 
 ジョシーの実家のすぐ裏は運河になっており、村の人々の生活の場になっていた。一日中誰かしら、洗濯をしていたり水浴びしたり、泳いでいる子供達の笑い声が聞こえてきた。昔はその脇に専用のボートハウスがあり、学校などにはボートで通っていたという。
 「この辺は今ではジャングルみたいだけど、昔はもっと整えられた村の風景だったんだよ。車道がない時代は移動はボートか徒歩だった。この家の前の道だって、今は通る人もいないけど、本当はチャンガナチェリーまで通じていて、昔は往来も多くにぎやかだった。だからヨギたちがこの道を通って、うちに泊まっていったんだ。カナルだってもっとキレイだったよ、ちょとした物売りはみんな船でやって来たから買い物に行く必要なんてなかった。」
 つい最近までは、ジョシーたちも運河の水場で身体を洗っていたらしいが、この頃は水が汚れてしまい、あまり入らなくなってしまったとのこと。私も一度くらい運河で水浴びをしてみようかと思ったが、そうこうしているうちに暑くなると、水草が異常繁殖をはじめどんどん水が濁ってきてしまった。
 ケーララの風景は急速に変わりつつあるようだったが、それでもまだまだ美しかった。
 
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 少し歩くとゆったりと流れる大きな川があり、そこからはまだアレッピーやチャンガナチェリーまで行くパブリックボートが運行していた。
 パブリックボートはバスよりも1.5倍くらい時間がかかったが、空気もキレイでリラックスでき、荷物が多くても置き場所があったので、買い物帰りによく乗った。夕方4:45にチャンガナチェリーを出るボートは、夕暮れ時で風も気持ち良く、夕涼みできるので二人ともお気に入りだった。
 町の真ん中にあるバス乗り場は人で溢れ、わさわさと落ち着かないが、ボート乗り場の周辺はすっかり寂れて、時間が止まったように静かでゆったりしている。手前の屋台でバナナを買い、レモン・ソーダを一気飲みするのがお決まりであった。
 ボートの運賃は1時間ちょっとの旅でバスのほぼ半額、たったの5ルピーである。(約10円)
 
 水辺の風景を眺めていると、飽きることなく本当に心が洗われた。川べりに点在する水場で体を洗う女性たち、小さなボートで行き交う人、大小様々な橋、水田と川の間のあぜ道のような細い土地に並ぶ家。水草の上に泊まる鳥。ボートが時間調整のためにエンジンを消すと、急にあたりは静まり返り、水音と鳥の声と遠くで洗濯をする音が耳に飛び込んで、それはうっとりするような天国の響きだった。
 ボートでの移動は、せわしないバスとは違い、乗客たちもリラックスして川の風景を楽しんでいるように見えた。音楽を聞いたり、昼寝したり、お菓子を食べたり、おしゃべりをしたり。実際にボートに乗ると必ずジョシーは知り合いに出会ったから、彼らが世間話をしている間、私はのんびりと自分の時間を過ごすことが出来た。
 
c0010791_19552024.jpg この辺りはバックウォータークルーズの拠点で、特にアレッピー周辺は渋滞ともいえるくらいハウスボートが多かった。乗っているのは外国人旅行者だけでなく、都会からの裕福そうなインド人家族も多かった。彼らは村の人々とは顔付きも、体つきも、服装も違った。
 「私はハウスボートは好きじゃないよ。これは公害じゃないか、毎日毎日人々の物見高い視線にさらされて生活するなんてどう思う?」
 確かに水の周りには普通の人々の日常生活があった。毎日の家事を、観光客に見られて過ごすなんて確かにうんざりだろう。それでも人々は、ハウスボートの観光客に向かい、無邪気に手を振っている。男達は全く意に介せず、半裸で黙々と身体を洗っている。
 5年前には、私も6000ルピー出してハウスボートに乗って、通り過ぎる村の風景やパブリックボートの乗客を興味深げに眺めていた。まさか逆の立場になって、たった5ルピーでハウスボートを眺めることになるとは。
  

c0010791_2032574.jpg 本当に大言う事なしのケーララの自然だったが、ただひとつ、困り果てたのはは蚊の多さであった。何しろ水だらけの地域なのだ。ジョシーの家も3方向に池やカナルなどの水辺があり、ほとんど枯れて濁った水が溜まっているばかりの場所もある。
 ヨガ的じゃないという理由で、ベープマットなどの使用はご法度であったので(ナチュラル蚊取り線香は時々こっそり使った。)元来日本でもしょちゅう蚊に刺される私は、とにかく蚊に刺されまくった。(5ヶ月間ほぼ毎日、10箇所以上刺されてたのではないか。)最初の頃は刺された場所が跡になってボコボコに残った。特に足元を狙われるので、念の為に持ってきた靴下が手放せなくなるとは思ってもみなかった。
 
 気にしてバリバリ掻きむしっていると、また師匠からのダメ出しが入る。「蚊を恐れると悪いヴァイブレーションに惹きつけられて蚊が寄ってくる、だからもっと平和な気持ちでいなさい。」「すいません、今ヨガをしているから邪魔しないで下さい、と蚊にお願いすれば寄ってこない。」なんと無茶なと思っていたが、後に弟も「蚊は殺されるという気を感じると、人間を刺す。」と同じ事を言っていたのでケーララの人の間では常識( ? )なのかもしれない。
どんなに気持ちを平和に保とうとしても、どんなに蚊にお願いしても、それでも毎日蚊はやって来たが、確かにだんだんと刺されても跡に残らず引っ込むようになり、あまり気にならなくなった。あんなに嫌いな蚊に耐性が出来たのは、この旅で意外と大きな収穫だったかも。ホント、インドの旅は何事も楽には終わらせてくれません。
by umiyuri21 | 2013-05-25 19:56 | ヨガ滞在記


旅とヨガとイラストレーション。世界と身体と脳内をめぐる旅。


by 若山ゆりこ

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