人気ブログランキング |

インディアン・ヨガライフ〜ケーララの村で暮らす 最終回

c0010791_15404444.jpg

水面に写るさかさまの世界

 東京に戻ってケーララ出来事を思い起こすと、全てが現実ではないような、夢の中にいたような不思議な気分になる。いや、ケーララにいる時も、今起こっている事が現実でないような心地が常にあった。
 午後遅く、ボートに乗って川の風景を眺めていると、ちょうど水面が鏡のようになり、水の中に逆さまのもうひとつの世界が浮かび上がった。その逆さまの世界だけをじっと見つめているうちに、水の中に揺らめくその幻に吸い込まれてゆきそうになる。自分の毎日もこの夢とうつつの隙間の世界みたいだ、とよく思った。
  
 滞在中は現地の携帯もPCも持って行かず日本との通信はほとんどできない状態だった。頼みの固定電話も国際電話の契約が解除されていて、受けることは出来てもこちらからはかけられない。ネットカフェに行きたくとも、これまたバスで1時間弱かかるチャンガナチェリーまで出るしかない。  
 会話といえばジョシーの謎の日本語に付き合うか、彼の友人や家族とつたない英語でコミュニケーションを取る。ほとんど情報が遮断された状態に暮らしていた。

「悩みや迷いは大抵5感を通して外からやって来る、だから不必要な情報をむやみに入れないほうがいいんだ。」
 確かに新聞もほぼ読まず、テレビもなく、TwitterもFacebookもネットもチェックしない毎日は、振り返れば、余計な考えに患わされない静かな日々でもあった。普段とは全く違う流れの中でヨガを実践し、生活し、自分の身体と心を否応なしに見つめていると、まるで水面にぷくりと汚れが浮き上がってくるように、忘れていた過去の記憶や、自分の中の頑固な思い込み、自分でも気が付かなかった側面を発見した。私がそれを口に出して言わずとも、それを察してか偶然か、絶妙なタイミングでブレイク・スルー的発想に導く言葉を投げかける師の直感力にも脅かされた。

c0010791_15415860.jpg
 
 帰国の日が近づき、ようやく心に余裕が出てくると、今までジョシーが教えてくれたこと、起こったことの全体が見渡せるようになってきた。それまでは全く気持ちにゆとりがなく、日々の雑事と師匠の言動に振り回されてばかりいたのだ。結局の所、彼は私の身体の使い方、心のありよう、食生活などを一旦バラバラに解体し、地ならしして、これからヨガを学んでゆくためのしっかりした土台作りをしてくれていたのだ、と気がついた。それなのに私は、すぐに2階建ての家くらい建つかと思って、何かとイライラをぶつけていた訳だ。今となってみればもう少し素直に、謙虚に学ぶべきだったと反省してしまった。そういえば、ジョシーもずっと私に、自分は何でも知っていると思うのを止めて、もっと謙虚になりなさいと言ってたのだっけ。(その時は十分謙虚なつもりだったのだ)
 
 彼が損得勘定なしに私に教えてくれた事の大きさに、今更ながら深い感謝と信頼の心が芽生えてきた。私の全く想像外の生活ではあったが、結構ディープな「スピリチュアル&ナチュラル・ヨガライフ」ではあったのだなあ、と思い至った。まあ、どちらかというと戸塚ヨットスクールに近かったような気もするが。この5ヶ月間何度、体当たりでバトルしたことか。きっと彼も私の煩悩やエゴの深さにやれやれと思ったことだろう。
 ともかく、終わり良ければ全て良し、ということで。

c0010791_15422794.jpg

 言葉の問題があったので(何しろ英語がほとんど通じない)、村人との交流はあまり多くない生活であったが、それでも私がもうすぐ帰ると言うと、何人かの人々がわざわざ挨拶しにやって来てうれしかった。少いヨガ友のニティンとソーマンもその二人であった。ソーマンは随分前からジョシーからヨガを習っており、子供向けのクラスなどで教えていた。他にも仕事を持っていたが、ヨガの先生になるのが夢らしく、私がちょうど帰る日に、バンガロールにヨガ教師の資格を取りに行くと旅立った。ちなみに試験の費用は1万ルピー(約2万円)だそう。ごく庶民の出身であるソーマンには結構な出費だったはずだ。インドでも日本と同じでヨガビジネスが盛り上がっているんだなあ、とちょっと驚いた。
 ニティンはカースト違いのガールフレンドとの結婚の夢に破れ、人生を変えたくてヨガを習いに来た(笑)、今時の気のいいお兄ちゃんであった。最初は真面目に学んでいたが、そのうち、ジョーティッシュの占星術家であるジョシーの弟が帰省してきて、いつのまにかジョシーよりも弟の元へ足繁く通うようになっていた。まあ、結婚したいならヨガよりも占いだよね。親分肌の弟の方にすっかりなついて、使いっぱやらされてたのが笑ったけど、帰る直前にアーユルヴェーダの目薬が欲しいと何気なく言ったら、わざわざバイクを飛ばして買って来てくれた。
 
 c0010791_15435100.jpg ジョシーは奥さんがケーララに来るまで待つことになり、私だけ一人で帰国することになった。来た時と同じように妹夫婦が空港まで送ってくれる。空港の入り口でみんなに別れを告げると、久々に一人になれてどっと脱力した。同時に今までの怒涛の日々からぷつんと切り離され、夢から覚めたものの、まだ自分が何処にいるか分からないような気持ちになった。
 出国審査ではさすがに5ヶ月何をしてたの?と尋ねられた。もしかしたらケーララに来てはじめて、冷房の効いた明るいきれいなトイレで自分の顔を見ると、真っ黒になっていて驚いた。しかもサングラス跡が見事にシミになり、体もすっかりやせ細っている。

 
 ようやく日本に帰り着き、無事戻りました、とジョシーに電話をする。「今までの数ヶ月が夢みたいに現実感がありません。」と言うと「ははは、ヨガをやっている時の時間は特別なんだよ。自分の時間というものはない、時間は神様のものなのさ。」とのお答え。ものすごく納得してしまった。

 と言うわけで、夢からまだ醒めきってない私は、なんとかあの異次元のような時間を書き残しておきたく、随分と長い滞在記を書き綴ってしまいました。(そういえば、旅から帰ってきて毎度滞在記をブログに書いてはみるものの完結させたのは初めてかも)読んでくれてありがとうございます。本当はまだまだ細かいネタ満載なんですが、何かの機会に発表出来ればいいなあと思っております。
 最後に私の好きなジョシーの名語録をもう一つ。

「自分の身体に礼拝をしなさい。あなたは今、誰とヨガをしていると思う? 地球とだよ、あなたと地球は重力で繋がっているんだから。」
 
 さて、明日もヨガやりますか〜!
by umiyuri21 | 2013-05-27 15:45 | ヨガ滞在記


日々の暮らし、旅やアート、ヨガなどについて綴っております。


by 若山ゆりこ

プロフィールを見る
更新通知を受け取る

S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

カテゴリ

全体
ヨガ
ヨガ滞在記
仕事
オリジナル雑貨
ベリーダンス
アート
音楽
映画
旅行
BOOKS
日々の暮らし
美容
スウィート・モロッコ
瞑想
探求
未分類

最新の記事

身体という門
at 2019-08-21 22:12
心の彼方で「私」と出会う 続..
at 2019-07-29 16:34
心の彼方で「私」と出会う 
at 2019-07-25 00:14
これからのヨガスケジュールと..
at 2019-06-13 19:36
5月のヨガレッスン
at 2019-05-02 20:03
2019新作Tシャツ ナタラ..
at 2019-05-02 19:37
ダンスと瞑想の集い開催いたし..
at 2019-04-25 12:36
サイレンス
at 2019-04-18 13:45
Tシャツイラスト制作のご案内
at 2019-04-08 18:53
父なる恩寵
at 2019-03-28 22:00

以前の記事

2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
more...

twitter

記事ランキング

ブログジャンル

海外生活
スピリチュアル

その他のジャンル