インディアン・ヨガライフ 第2ラウンド~Vol.11

 「絶対に他人の意見を受け入れてはならない。良いことであろうと悪いことであろうと。ただ彼らに言いなさい。「悪いが、どうかあなたの意見は胸の内にとどめておいてください。私は自分自身です。」その覚醒にとどまれば、あなたを操ることは誰にもできない。あなたは自由だ。そして自由は喜びだ。自由は難しい。覚えておきなさい。というのも、社会は奴隷で成っているからだ。自由は難しいが、自由は存在する唯一の喜びだ。自由は存在する唯一の踊りであり、神への唯一の扉だ。奴隷が神へたどり着くことはない。奴隷にはできない。」Osho/タントラの変容

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 「暗雲」

  こんな風に自由闊達なジョシー先生であったが、そのあまりの自由さゆえに、周囲と衝突してしまう。そんなシコリの影が彼のまわりにちらほら見えるのを私は感じでいた。とにかく、人に気に入られるために自分の意見を変えるつもりなど、この人にはさらさらない。そばで見ている私はハラハラしどおしだ。
 彼が健康で一人で好き勝手に生活できた頃は、それでも良かった。しかし、事故で心身が不自由になり、その上離婚をしてインドでの滞在が長くなってからは、そこに去年まではなかった新しい軋轢を生み出している事に、気付かずにはいられなかった。

 彼は誰かのサポートがないと、キチンと一人では生活できない状態であった。誰かのサポートを必要とする、ということは、そのサポートする人の言うことを聞かねばならない。しかし彼には全くその心づもりはない。不自由を感じると不機嫌になり、相手はせっかく助けてやってるのに、感謝の気持ちがないと言って怒り出す。そういういざこざが彼の弟妹の中で起きつつあった。致し方ない事ではあるが、それを傍目から見ているのは辛かった。

 特に去年までは何かとジョシーの面倒を見てくれ、あれこれ気を使ってくれた、アレッピーに住む妹と決裂したのは痛かった。
 去年私が滞在していた時は、ジョシーもとても妹を頼りにし、何か困ったことがあるとすぐ彼女に電話をしていたのだ。しょっちゅう彼女の家に遊びに行って、ご飯をごちそうになったり、遅くなった時は必ず彼女の家に泊めてもらった。ところが、今回は私が着いて早々に大げんかをして以来、全くお互いに連絡しなくなってしまったのだ。
 年末に芝居を見に行った時に泊まる場所に苦労したのも、妹に頼めないせいでもあった。元々、ジョシーの兄弟は派手に口喧嘩はするものの、後になればけろりと忘れてすぐ仲直りするから心配ないよ、と聞いていたし、実際去年まではそうだったのだ。ところが、どうも今年は勝手が違う。お互いの間にすぐには仲直りできない、重たい雲がのしかかっている。

 それは、湾岸への出稼ぎから戻ってきている弟の間でも同じだった。こちらは弟自身の仕事や家庭生活が上手く行っていないらしく、昔からの酒好きに加え、ストレスで酒量が増えがちになっているのが、問題であった。
 去年の4月に出稼ぎ先のマスカットから戻ってきて、すぐ戻ると言いつつ、そのまま実家に居続け、11月にVISAが取れたからと急にドゥバイに旅立ったが、すぐに戻ってきて、今度はアブダビに行くと、未だにVISAの申請待ちをしている。近郊の町に奥さんが両親と共に住んでいるが、そっちにはごくたまに戻るだけで、実家とアレッピーの妹や親戚の家を行ったり来たりしている。
 去年もしばらく一緒に住んでいたが、その頃は飲酒の量もそれほどではなく、ジョシーと口ゲンカしつつも、彼がケアしきれない生活の雑事を片付けてくれたから心強い存在だったのだ。
 ところが今年は、見るからに飲み過ぎでヤバイというオーラを漂わせている。師匠は元来酒嫌いであったので、弟が飲み過ぎて帰ってくると家の空気がピリピリと硬くなった。弟は弟で、酔っ払うと「ジョシーは頭を打ってあんなにおかしくなった、それでも俺の兄だ勘弁してくれ。」などと私に絡んでくる。はっきり言ってものすごく居心地が悪い。

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 事故の以前から、先生には自分のやり方を決して曲げない気難しい一面があったことは聞いていた。さらに事故の後は感情のコントロールが効かずに、唐突に怒りだすこともしばしばあった。記憶の欠落で、人を疑いやすくなっている事も否めなかった。
 ジョシーの方も周囲が「あいつは頭を打っておかしくなった」「何でもすぐ忘れる」「言うことを聞かない困った奴」などど否定的な感情を持つとそれを敏感に察知して、頑なになり、人に対して厳しくなる。
 
 「私は一人で出来ることは何でもやってるんだよ、でも人は出来ないことばかり指摘する。そしてジョシーは頭がおかしくなった、あれが出来なくなった、これができなくなった、ってそういう事ばかり言うんだ」とポツリと言われた時には胸が傷んだ。
 時に私もそういう目で彼を見ることがあったからだ。
 
 ジョシーは日々本当に沢山の事を私に教えてくれた。その感謝の気持ちとして、当然の返礼として、彼の生活のお手伝いをしているつもりだった。しかしそれがルーティンになり、彼の自由気ままさに振り回され続けると、「こっちはこんなに頑張ってサポートしてるのに!」とだんだん高飛車な気持ちが頭をもたげてくる。何度も何度も繰り返していることを覚えてくれないと、「もういい加減にしてくれ、このボケ老人!」と心のなかで悪態を付くことさえある。

 さらに時に愚かと知りつつ、事故前の彼と今の彼を比べてしまう。昔のお弟子さんから、先生と以前はこんなレッスンをした、などという話を思い出し、「ああ、もうこの人にどんなに長いこと付いても、同じことは教えてもらえないだろうなあ。」と複雑な気持ちになる。「いつか教えるから」と言っていた事をいつまでたっても教えてくれないと「もう、やり方忘れちゃって教えられないんじゃないの?」と不信の目を向ける。そんな自分が本当に嫌なのだが、心というのは本当に浅はかな事にとらわれてしまうのだ。

  師匠を敬愛しつつも、未だに心から信頼しきれない、そして周囲からは彼に対する冷たい空気を感じ取ってしまう。さらにいつまでも治らない足の傷。来た頃はただヨガを教わることに夢中だったので、細かい事はあまり気にする余裕がなかった。
 しかし時が経つににつれて、薄々感じていた灰色の雲が、じわりじわりと濃くなって、私の心を圧迫しはじめていた。 
by umiyuri21 | 2014-05-17 23:09 | ヨガ滞在記


旅とヨガとイラストレーション。世界と身体と脳内をめぐる旅。


by 若山ゆりこ

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