インディアン・ヨガライフ 第2ラウンド~Vol.14

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「家出」

プラデープ夫妻のお宅から帰宅した我々を待ち受けていたのは...素っ裸で泥酔し、軒先に寝転がっていびきをかいている弟の姿であった。今日は結婚式があると言って出て行ったから、ちょっと気になってはいたんだけど、まさか....。
 この家の鍵はひとつしかなく、我々が持って行ってしまったから、飲んで帰宅して私達を待っているうちに寝込んでしまったのだろう。しかし、なんで素っ裸なんだろう。自分でかけたのか、誰かがかけたのか、腰にかろうじてタオルが一枚巻きつけてある。

 楽しい午後の余韻が一気に吹き飛んだ。 
 「どうしよう...起こした方がいいよね。」
 「そのままにしておけばいいさ、そのうち起きるから。」
 と、険しい顔で言うジョシー。う~ん、起こしたら起こしたで面倒くさそうなので、ちょっと放っておくか。
 とは言っても気が気ではない。いっそ、このまま朝まで眠り続けてくれたらと願うが、日はまだ傾いてきたばかりだ。不安な気持ちで部屋をうろつく私の傍らで、先生は部屋の掃除を黙々とはじめる。
 
 1時間ほどして、弟は突然目覚めた。ろれつの回らない声でジョシー何やら凄んでいる。どうしよう、やばい...
 「彼は何言ってるの?」
 「別に、お前はなんで部屋の掃除なんかしてるんだって。」
 「お願いだから下手なこと言わないで下さい、喧嘩しないで。」
 「大丈夫、私は黙ってる。」
私も彼とは顔を合わせたくなので、無事を祈りながら自分の部屋に引っ込んでいると。突然罵声が響き渡る。急いで飛び出すと、ジョシーと弟で取っ組み合いの喧嘩になっていた。

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 「くそ、私の手をねじったな。指を痛めた。折れたかも...」
 怒り心頭で師匠も興奮状態となる、大声でジョシーになにやら喚き立てる弟、急いで間に入って止にめにかかる。罵声を聞いた近所の人たちも駆けつけてきて仲裁に入った。こういう時は素早いインド人!弟は完全に理性を失ってべろべろである、怪我をしている足や頭を殴られたりでもしたら大事だ。二人を一緒にしてはならん!
 
 近所の人たちが、庭先に弟を連れ出し引き止めている間に。私はとっさに、家の扉を全部閉めてしまった。とにかく怖ろしい気持ちでいっぱいいっぱいだったのだ。閉めだされた弟はさらに怒り始め、今度は窓ガラスをバンバンと叩きだした。バリンと音を立てて一枚が割れる。その隙間から彼は手を伸ばし「開けろ!開けないとお前をジェイルへ入れるぞ!」と凄む。
 「酔っぱらいは絶対に入れない!外国人ツーリストに出を出したらジェイルへ行くのはお前だ!」と英語で言いたかったけど、とっさに出てこず私も日本語で喚き立てる。しかし、どうしたらいいのだ...?

まず、アレッピーに住む妹に電話をしてみる。「ああ、彼はいつも飲み過ぎるのよ、私は今勤務中だから、夫を迎えに行かせて弟を連れて帰るわ、それまで待ってて。」
次、尼僧の妹に電話「ああ~仕方ないわねえ。近所に住んでる親戚に電話して、助けに行かせるわよ。」と、結構淡々としたもんだ。
 
 そうこうしている間にも、弟は家中の窓ガラスをバンバン叩いて、叫びまわっている。しかも、最低なことに向かいに住む呑んだくれ親父も、今夜はしこたま飲んだらしい。二人の罵声がダブルで聞こえてきた。完全な悪夢だ...
さらに仲裁に来た近所の人たちも、半分酔っ払っていて「ここは彼の家なんだから入れてやればいいじゃないか。」と言う。嫌だ!絶対に入れたくない。
 くそ、だてにアル中率インド最悪の場所じゃないな。もう、酔っぱらい恐怖症になりそうだ。

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 助けに来ると言っていた、親戚も妹の夫もなかなか来ない。恐ろしくてとても今晩ここで夜明かしする気になれない。というか、弟がここに居る限り、今後もうこの家では生活できそうにない。またこんな風に泥酔されたら、何が起こるか分からない。
 途方にくれていると、ジョシーは「トミーの家に電話してみるよ。」と言う。
 年末にも何かと世話になったトミーさんは師匠の最も親しい友人の一人であった。
早速電話をしてみると、すぐに繋がり、事情を話すと今から迎えに来てくれるという。彼の家からここまではどんなに急いでも1時間半くらいはかかる。それまでに、急いでカバンに荷物を詰め込んだ。しばらくはここには戻れないかもしれない。まさか、こんな展開になるとは....

 荷造りが済んだ頃、トミーさんから、近くまで来ていると連絡が入る。少し前から弟の声も聞こえなくなった。親戚の人が連れて帰ったのだろうか。
 向かいの酔っぱらいおやじの怒鳴り声もいつの間にか止み、あたりは、ひっそり静まりかえっている。カバンを抱えて恐る恐るドアを開ける。鍵をかけようとしたら、家の裏からおもむろに弟が出てきて、鍵を奪って中に入ってしまった。どうやら私達が出かけるのを待ち受けていたようだ。
 鍵を取られちゃったから、本当にしばらく帰って来れなくなってしまった。

  森の中を抜け、車道に出るとトミーさんが迎えに来てくれていた。車に乗り込んだら、心底ホッとした。同時に切なくて涙が出てきた。
by umiyuri21 | 2014-05-22 22:02 | ヨガ滞在記


旅とヨガとイラストレーション。世界と身体と脳内をめぐる旅。


by 若山ゆりこ

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