インディアン・ヨガライフ 第2ラウンド〜Vol.29

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「急がず騒がず...」

 ティルバンナマライの日々はケーララの生活とは大分勝手が違っていた。
 アシュラムに通ってただ坐っていると言っても、一方で毎日誰かしらと出会って、おしゃべりをしているのだから、賑やかで気楽な毎日だ。
 ジョシーの家に住み込んでの合宿生活と比べれば、ここではいつまで待っても来ないバスを待たなくていいし、掃除もいらない、食べ物に群がるアリにも悩まされなくていい、外国人など居ない村に住んで、淡々と日々を送るケーララの暮らしの方が静かといえば、うんと静かだ。
 今から考えれば、怒涛のヨガ合宿の、締めの修学旅行みたいな旅だったのかもしれない。
 
 気がつけば私のインド滞在の時間は、残すところ数週間になっていた。
 最初は1週間ほどで帰るつもりだったのに、何かと去りがたい事が起こって、ティルバンナマライでの滞在はズルズルと伸びていた。
 基本的には幸せで、満ち足りた日々であったが、困ったのは外食が続いているため、二人共お腹の調子が思わしくないこと。
 レストランの食事は悪くはないが、外国人向けのレストランは量がやたらと多くて、つい食べ過ぎてしまう。近くに地元向けの南インド料理店もあったが、タミル・ナードゥのミールスはケーララよりもゴージャスでメリハリが効いた味付けなのだが、その分スパイシーで、続くと胃に負担がかかった。
 特に、意外であったがジョシー先生の方が先にやられてしまった。

 アルナーチャラ山の中腹にはマハルシがティルバンナマライに住み着いて初期の頃に、16年間を過ごしたというビルパクシャ洞窟があった。そこから少し上に登った所には、その後訪問者が増えて建てたというスカンダ・アシュラムの建物が残っており。現在のアシュラムからそこへ至る山道は、一種の巡礼コースになっていた。
 本格的なアルナーチャラ巡礼は、満月の日に時計回りに山の周りをぐるっと一周する、ギリプラダクシャが習わしなのだが、さすがに足の悪いジョシー先生には無理なのであきらめるとしても、せめてこの洞窟までは行ってみたくて、ある日山道を歩き始めた。

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 40分ほどで着く、と言われていたが、急で足場の悪い階段が多くて師匠には少々きつかったらしい。ゆっくり歩いて1時間ちょっとで洞窟までたどり着いた。
 目が慣れるまで、しばらく何も見えないほど暗く、蒸し暑い空間であった。くぐもった暗闇の中に熱心に瞑想する人々が数人坐っている。
 子宮の奥に佇んでいるような濃密な空気であった。
 一方のスカンダ・アシュラムの方はもう少し開かれた場所であった。山の中腹からの眺めも良く、ここまで来るには少々時間がかかるゆえ、人も少なく、しんとして、親密な空気が漂っていた。

 どちらもまたパワフルな場所で、しばらく坐っていたかったが、ジョシー先生がやたらと帰りたがるので、名残惜しい気持ちで山を降りる。
 時はすでに3月半ばで、日差しはかなり強烈であった。町に戻るとのどが渇いてヘトヘトになっている。急いで、近所のツーリスト・カフェに入って、キャロットジュースを一気飲みした。よっぽど喉が乾いていたのか、ジョシー先生はそれを立て続けに2杯もがぶ飲みしていた。普段は冷たい飲み物にはかなり気を使っているのに、大丈夫かなあ、と思っていたら、やっぱりそれが悪かったらしい。

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 夕方サマディー・ホールに坐っていると急に「寒くない?」と言い出して、帰り際道路の端でおもむろにげろ〜っと吐き出した。わわ、先生大丈夫!?
 こういう時でも、師匠は絶対苦しい顔や具合の悪そうな顔はしないのだ。大体、毎朝大量のお湯を飲んで吐き出す、クンジャラ・クリヤーを日課にしているので、吐くこと自体にはなんの抵抗もないのだが...。それでも、困ったとかどうしようとか、表情が全然動かないので、こっちもなかなか彼の体調の変化に気づかず、つい無理をさせてしまう。やっぱり洞窟まで無理に連れて行ったのが悪かったのかなあ。かなり足に負担だったんだろう。ごめんなさい!
 それ以来、ずっとジョシー先生はお腹を壊したままだった。そのうち、私もだんだん、胃の重苦しさが抜けなくなっていて、食欲不振に陥ってしまった。
 ああ、お腹に優しい食べ物が食べたいなあ。プラデープの家で食べてた、おかゆが懐かしい...

ラマナ・アシュラムでは宿泊者には一日3回の食事が供される、そこの食事はあまりスパイシーではなく胃に優しいと聞いていたが、宿泊者でないと食べることが出来なかった。
 以前は宿泊者でなくとも、ドネーションを払えば食事をいただけたが、訪問者が増えたせいか、現在は許可されなくなっていた。
 アシュラムでは、以前レストランで一緒になったAさんと度々顔を合わせるようになっていた。色々と内部の事情に詳しい彼女によれば、人によってはあっさりと、食事の許可をもらったり、飛び込みでも部屋が空いていて、さくっと泊まれる人もまれにいるらしい。
 このアシュラムで働く人々は、ほぼ奉仕活動みたいなもので、訪問者がお金で何でも解決しようとしたり、感謝の気持ちに欠けた態度をとると、扉を固く閉ざしてしまうのだそうだ。大切なのは愛と感謝とマハルシに対する献身で、見ていないようで彼らは日々訪れる人をちゃんと見ているんですよ、とのことだった。

 で、どういう訳か、ジョシーさんとこのアシュラムの人たちは、相性が悪かった。きっと彼がヒッピー風の派手なプリントシャツなんかを着ていたせいかもしれない。ジョシー先生も自由人ゆえ、どちらかといえば組織というものが苦手らしく、腰の低い態度を取れないのだ。
 お腹の調子が悪いので、なんとか食事の許可が欲しいところであったが、入り口ですげなく追い返されたり、どうも具合が悪い。1回だけ、シュンニャさんのアドバイスで、上手く取り計らって、ようやく夕食を食べさせてもらった。

 サマーディー・ホールの奥の建物が食堂になっており、食事の時間が来ると、カランカランと鐘の音が鳴って、訪問者は順に食堂に入り、地べたに並んで坐る。壁には沢山のマハルシの写真や絵が飾られていた。葉っぱで編まれたお皿が、床に並べられ、そこにどんどんと、ご飯が盛られていく。家の食事に近い、あっさりして優しい味のアヴィヤル(野菜のココナッツ煮)、ラッサム、ミントのチャトニーとバナナ。う〜ん、こういう食事なら毎日食べられそうなんだけどなあ。

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  食堂では、Aさんと隣り合わせになった。世間話をしながら、彼女が日本で長く学んでいた瞑想の先生の話になり、興味をもった私はつい、色々と余計な事を尋ねてしまった。私も瞑想の勉強がしたいのですが、東京で良い先生はいないのでしょうか、とか何とか...
話した瞬間に、やばい!また先走ってしまったと後悔して、「すみません、私また先走りグセが出ました。いつも先生にも怒られるんですけど。」とフォローしてみたが、案の定Aさんがちょっと険しい口調で私に言う。
 「何事も、待って様子を見るという事が必要なんですよ。ゲットすることよりも、望む気持そのものを通して神と向き合う事が大切なんです。」
「そのような気持ちで、瞑想を捉えても上手くいきません。現代の社会では、お金や効率で何でも捉えがちだけど、それとは全く違った流れで動いている世界があるんです。そこを切り替えられないと...とにかく最初が肝心なんですよ。きっとあなたは勉強を始めたばかりで、接点にいるのでしょう。最初で間違ってしまうと、そういう先生に出会ってしまって、どんどん変な方向に行ってしまいますからね。」

「私の言うことを分かって聞いてくれたら、うれしいですけど...。今の先生はいいと思いますよ。あなたは何でも頭で先に考えてしまう人のようだから、彼のように言葉の少ない先生と出会ったんじゃないかしら。
 どうか、面倒くさいなあ、なんて思わないで。でも、最初は反発してもいいんですよ。神様は気長に待っていてくれますからね。」
 と、また深いことを言われてしまった。

 は〜...私ったら相変わらず学ばないよな。と少々落ち込んでホテルに戻る。扉を開けると、暗闇の中ゴソゴソと何か動く気配....。ネズミがおもむろに飛び出して、部屋から廊下へと駆け抜けて行った。びっくりして「ぎゃあ!」と叫ぶと、ジョシー先生に冷静さが足りないと、またもやお叱りを受ける。
 そういえば、昨夜、足の指先にちくりとした痛みを感じで、目を覚ますと、親指に小さい切り傷が出来ていたのだ。これは何の虫なのか?と気になっていたのだが、ネズミかあ!
 「ジョシーさん、私昨日の夜ネズミに噛まれたみたい。伝染病とか大丈夫なんでしょうか?」
 そわそわと心配していると、師匠はますます不機嫌になった。
 「心配するな!ネズミに食われて病気になったら、それは神様が望んだことだ。」
だってさ...全く、クソ食らえ!(笑)
by umiyuri21 | 2014-06-17 21:24 | ヨガ滞在記


旅とヨガとイラストレーション。世界と身体と脳内をめぐる旅。


by 若山ゆりこ

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