インディアン・ヨガライフ 第2ラウンド〜Vol.30 

c0010791_23244315.jpg


「笑うヨガ!」

  ジョシー先生がお腹を壊してしまったので、体調が落ち着くまでもう少しここに居たほうが良さそうだ。そんな訳で、さらにティルバンナマライの滞在が延びてしまった。「まあまあ、もう少しゆっくりしていきなさいよ。」とアルナーチャラのシヴァ神が言ってくれたのかもしれないが。
 
 一週間以上の滞在になるのなら、キッチン付きの部屋でも借りればよかったな。アシュラムの向かいには外国人向けのスーパーが2件ほどあって、そこには何とオーガニックの穀物類やスパイスなどがずらっと並んでいた。ケーララであんなに探した、オーガニックのオートミールもあるではないか!
 いやあ、ここで暮らしたら、ノース・ヴェリヤナード村よりもずっと快適な暮らしができそう。聞けば部屋代もそれほど高くはないらしい。シーズン前に来れば一軒家を借りても一月5,000ルピー(1万円弱)くらいだとか。ヨガの出来る広さの家でも借りれば、数ヶ月くらいあっという間に過ぎてしまいそうだ。

 せめて残りの僅かな日でも、キッチン付きの部屋を探してみようかと、ある日いつもとは反対方向に歩いてみることにした。少し行くと、緑に囲まれた地中海風の洒落た建物があった。レストランだろうか、気持ち良さそうな空間なので、ちょっと覗いてみよう。
 そこはキリスト教系の団体がやっている「クオ・ヴァディス」という名のレンタルスペースだった。一階がレストランでメニューを見ると、ドーサやポンガルなど南インドの普通の朝食メニューが載っている。値段も安い。
 注文した料理も割合味付けがあっさりしていて、胃にも負担がかからない。なかなか良い店を見つけた!
 そこで一人のアメリカ人の青年に話しかけられた。聞くと1年ほど伊豆で暮らしていた事があるんだとか。日本歴の長いジョシー先生と話が合って、ちょっとおしゃべりした後、「これからこの屋上で、ラフター・ヨガのクラスがあるんだよ。日本人女性がインストラクターなんだ、一緒にどう?」と誘われた。
 
 ラフター・ヨガ、いわゆる笑うヨガというやつである。笑うことと、ヨガの呼吸法を組み合たインド生まれのエクササイズで、身体の柔軟性も何も必要なし。ただ笑うだけ!しかし、自然と呼吸が深くなり、免疫力をアップさせ、血の巡りを活性化させて、元気になる。笑いの効用を最大限に生かしたヨガなのだ。
 以前ジャイプールのホテルで朝のヨガクラスを受けた時、レッスンの最後にかならず笑う時間があった。それが、ラフターヨガの初体験といえばそうなのだが、本格的なクラスは初めてだ。
 「いいんじゃないの?行こうよ。」
 とジョシー先生。じゃあ、ちょっと笑いに行ってみようか。

c0010791_23324572.jpg

 
 アルナーチャラ山が遠くに見え、鉢植えの植物が美しく飾られた屋上スペースはちょっとモロッコのリヤドのようで素敵な空間だった。クラスはすでに始まっていて、ウクレレの音と歌声、そして笑い声が響いてきた。
 ジョシー先生、ここでいきなり満面の笑顔にモードチェンジ!!笑って踊りながら、人々の輪の中に入ってゆく。おお、すごいな〜やっぱり。このためらいの欠片のなさが、さすがだよ。
 小柄な日本人の女性と、西洋人の男性のカップルがナビゲートしながら、ひたすら笑いまくるこのクラス、思いがけず楽しかった。目を合わせながら笑ったり、おかしな顔をしながら笑ったり、ジベリッシュを使ったり、ひっくり返りながら笑ったり。
そして最後に横たわって呼吸を整えながらリラックスする。
 まあ、とにかく笑うだけなのだが、笑えば笑うほど元気になって。身体の底に溜まっていた疲れや感情のシコリがほぐれてゆく。笑いってほんとうに凄いヒーリングパワーがあるんだなあ。
 ずっと静かに黙って坐っているだけだったので、久々にしゃきっとテンションが上った。これはなかなか、いいではないか。
 
 インストラクターの日本人女性はメガナンダちゃん、としてパートナーの男性はアメリカ人とパレスチナ人のはハーフで、ハレルヤ・ババと名乗っていた。30代半ばくらいだろうか。二人はバンガロールでのラフターヨガのTTCで出会って意気投合し、クラスを開きながら、一緒に旅を続けているらしい。ラフターヨガの先生らしく、笑顔が素敵な、いい感じのカップルであった。メガナンダちゃんが歌を歌い、ハレルヤババが楽器を奏でる。生演奏を効果的に使って、場を上手く盛り上げてくれる。
 クラスに参加している人々も、ドイツやフランス、日本など様々な国籍であったが、お互い目を合わせて大笑いし続けると、自然に心がほぐれて、妙な一体感と親密感が生まれてくる。
 同年代の参加者もいたが、多くは20~30代くらいで、インドのあちこちを旅しているトラベラー達であった。アシュラムで出会う、ひたむきな雰囲気の探求者とは一風違っていて、もっとダウン・トゥ・アースで、いい意味でリラックスしている感じ。
 まあ、ここで笑ってるからリラックスしてきちゃうのかもしれないけど。

 c0010791_23333577.jpg何気にこのラフターヨガが気に入ってしまって、アシュラムへ行く前にクラスに顔を出すのが日課になってしまった。
 
 私は思いがけず、ジョシー先生の笑顔パワーにやられてしまった。「やる時は100%きちんとやる。」と言うのが常日頃から口癖の師匠であったが、笑う時も躊躇というものが一切ない。本当はお腹の調子が悪くて、二人きりで居る時はちょっと不機嫌気味だったのにもかからわず。スイッチをカチッとONするように、完全な笑いモードになっちゃうんだから、そこは見習わねば。 

 インストラクターのお二人は別としても、大抵の参加者は笑顔の瞳の奥に、照れくささや、はにかみが見え隠れしていた。そのシャイな笑顔もまた素敵なんだけど、そういうものが全くなく、笑いの中に完全に在りきる姿は、清々しく、場の空気をぐいっと動かす力がある。

 レッスンが終わると、ハレルヤババが「これから満月まで毎日、借りている家の屋上でサンセット・パーティーをやってるんだけど、都合が合えば来て下さい。夕日を見ながら音楽をかけて踊るんだけど...」と言う。
 さすがに、そんなパーティーにはジョシー先生行かないだろうと思いきや、珍しく乗り気で行くというので、ある夕方地図を頼りに出かけてみた。
 ラマナ・アシュラムから歩くと20分ほどの場所にある一軒家のペントハウスを彼は借りていた。部屋はごく質素だけれど、広い屋上スペースからアルナーチャラ山がどかんと見渡せた。
 パーティーというから、音楽をかけながら、おしゃべりしたり、飲み食いしたり、そういう普通のパーティーかと思ったら。さすがにゴアあたりとは違って、この町ではパーティーと言っても、そういうパーティーじゃあなかった。
 OSHOが考案したアクティブ・メーディテーションのひとつ、クンダリーニ・メディテーションをシェアする集いであったのだ。アクティブ・メティテーションとは通常のじっと坐って行う瞑想ではなく、踊ったり身体を動かしたりしながら行う、動きのある瞑想のこと。もともと坐る瞑想の習慣がなく、いつも考え過ぎの傾向にある現代人の為に作られたメソッドである。
 
 クンダリーニ・メディテーションとは日没時に行うのが最適とされ、「身体を振動させる」「自由に踊る」「目を閉じて静止する」「横たわって静止する」という4つのパートから成る。
 アルナーチャラが夕日に赤く染まる日没頃から音楽が始まった。レイブパーティーのメディテーション版みたいなものだが、酒も飲まずに素で踊るわけだから健全なのだ。荒野の向こうに広がる岩山に夕日が沈み、日が落ちると満月近い月が東側から上がってくる。野外で踊るシチュエーションとしては最高だ。元来ダンスが好きなジョシー先生もすっかりエンジョイしている。
 ちょっと思いがけない展開になってきたが、この流されてる感じが、旅ならではの楽しさよ。藍色に濃くなる空の闇を見上げて横たわりながら、幸せな気持ちになる。
 結局このアクティブ・メディテーションの集いにも、2日続けて通ってしまった。

c0010791_23374053.jpg


 終了後、みんなと体験をシェアしながらゆるゆる時間を過ごす。帰り際に、別の女性が「今度、私が泊まってるゲストハウスで5リズム瞑想(ダンスを使った動的瞑想法)をシェアするから、よかったら来てね。」と言われた。アシュラムの外で行われるこうしたWSはドネーションで行うのが基本らしいが、こうやってみんな小遣い稼ぎをしている訳か。
 長年ラマナ・アシュラムに通っている年配の旅行者、そして自分よりも年下のトラベラーたち、それぞれにティルバンナマライでのつきあい方や楽しみ方は違っているが、みなラマナ・マハルシを深く敬愛し、アルナーチャラのエネルギーに引きつけられていることは変わりない。

 ハレルヤババも大学時代に初めてティルバナンマライを訪れて、以来すっかり気に入ってしまい、しばらく毎年のように数ヶ月単位で滞在していたそうだ。
「それでも、アルナーチャラ山は来るたびに違う表情を見せてくれるんだよ。」
「僕は以前、ラマナ・マハルシが生きている頃からアシュラムに通っている、年取った帰依者たちにインタビューして回ったことがあるんだ。マハルシが生きていた頃と亡くなった今、アシュラムはどんな風に変わりましたか?って。そしたら驚くべきことにほとんどの人が、昔も今もあまり変わらないって答えたんだ。」

 満月近くの月は煌々と輝き、群青色の空にアルナーチャラの鋭い稜線をくっきりを浮かび上がらせていた。
 満月の夜には、アルナーチャラをぐるりと廻る巡礼のために、沢山の旅行者がティルバナンマライにやってくるという。確かにここ数日アシュラムを出入りする人が増えてきた。
「もう暑くなってきて、旅行者も大分減ってきたので、この満月が過ぎたら、私達も北へ移動しようと思ってるんです。もう、クラスにも人が集まらなくなってきたから。」とメガンナンダちゃんが言う。
 確かにティルバンアマライの気候は日に日に暑くなってきた。ケーララと違って乾燥しているから、日差しが痛いくらいに肌に刺さり、熱風で頭がクラクラするほどだ。
 
 そうかあ、ぼちぼち私達も帰り時なのかな。
[PR]
by umiyuri21 | 2014-06-21 23:35 | ヨガ滞在記


旅とヨガとイラストレーション。世界と身体と脳内をめぐる旅。


by 若山ゆりこ

プロフィールを見る

S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30

カテゴリ

全体
ヨガ
ヨガ滞在記
仕事
オリジナル雑貨
ベリーダンス
アート
音楽
映画
旅行
BOOKS
日々の暮らし
美容
スウィート・モロッコ
未分類

最新の記事

踊るダキニ
at 2018-09-04 20:19
9月のヨガレッスン
at 2018-08-30 19:27
ケーララの洪水 (続)
at 2018-08-19 23:44
ウォーターランド
at 2018-08-17 23:15
8月ヨガレッスンのお知らせ
at 2018-07-31 13:54
内なる王座
at 2018-07-26 18:05
熱い想い
at 2018-07-20 21:31
7月のヨガレッスン
at 2018-07-01 22:06
クリアな世界!
at 2018-06-29 11:53
サンタクロースのようなおじさ..
at 2018-06-10 21:49

以前の記事

2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
more...

twitter

記事ランキング

ブログジャンル

海外生活
スピリチュアル

その他のジャンル