インディアン・ヨガライフ 第2ラウンド~Vol.34

c0010791_22364993.jpg


「寺院での会話」

 どんどん過ぎゆくケーララの日々。もうおみやげも買ったし、あとは帰るだけ。そんな時期に及んで、ジョシー先生の足の傷がまた復活してきてしまった。もう傷口はほとんどふさがって、乾くのを待つばかりだったのに...
何とまあ、しつこい傷だこと。ティルバンナマライでヒーリングしてくれたAさんにも「そろそろ治る頃だと思います。」って言われてたのに。
 結局私が帰るまで、この傷は治らなかった訳だ...。もう一度、プラデープの所で診てもらわねばなるまい。

 もうすぐムンバイへ帰るというアシシュへの挨拶もかねて、モンコンプへ向かう。ソーハナさん一家はクマラコムへ向かい、アシシュのお父さんは一足先にムンバイへ戻っていた。アシシュは一人残って、朝にヨガを学び、一日2回のアーユルヴェーダのトリートメントを受けていた。
 プラデープが言うには、ここに来るまで、彼はなんといわゆる「ウンコ座り」が出来なかったそうだ。インドに行けば道端にしゃがみ込んでじ~っとしているインド人をよく見かけるし、インドの伝統的なトイレは日本の和式トイレと同じしゃがみ式である。けれどずっと都会で育ってきた彼は、インド式トイレなど全然使った事がないそうだ。しかも、モスキートも嫌がるし、カエルが大の苦手ときた。この辺では雨の後などによくカエルが家に上がり込んで来るのだが、彼は悲鳴を上げてマジで逃げまり、子どもたちにからかわれている。
 いや~インド人と言っても、ムンバイ育ちはここまで都会っ子になってるのか、と逆にカルチャーショック。

 そんなこんなで、いつもの様に皆とおしゃべりしながらのんびりと時間を過ごす。
「ところでジョシー、あなたはいつ日本に帰るつもりなの?」
とプラデープが聞く。実はジョシーは離婚をしていて、日本に戻る予定がないことをずっとプラデープに隠しているのだった。
「いや~、来月くらいには帰るつもりだよ。」
と涼しい顔で言うジョシー。しかし、今後の師匠のケーララでの生活が気がかりで仕方ない私としては、ここで正直にジョシーが帰国する予定のないことを告げて、プラデープに時々様子を見てやって下さいとお願いしたいところであった。
「ねえ、ジョシーさん。プラデープにはこれからもお世話になるんだから、正直に本当の事を言ったら?」
とそれとなく提案してみたのだが、案の定聞く耳は持たない。やれやれ困ったものだと思っていたら、偶然不思議なチャンスが巡ってきた。

 結局その日ものんびりしていたら夜遅くなり、彼の家に泊まって行くことになった。暗くなる頃、プラデープが「最後だから、隣のテンプルの中に入ってみたくないかい?」と誘ってくれた。本来ケーララ州では異教徒はヒンドゥー寺院の中に入ることは出来ないのだが、外国人だし、ヒンドゥー教徒と一緒でサルワール・カミーズを着ていれば問題ないよ、と言う。ジョシーは疲れているので、ここに残ると答える。
 思いがけなく、プラデープと二人きりで話す時間ができた。私はずっと気がかりだった事を一気に彼に吐き出した。実はジョシーは奥さんと離婚していて、VISAの関係もあり、当面日本に帰る予定はないこと。そして彼が頑固なゆえに、家族と衝突してしまい、誰も彼の面倒を見ようとしないこと。私が帰国した後の彼の生活が気がかりなこと、など...

c0010791_22372193.jpg


「そうだったのか、色々話が出来て良かったよ。私もあなた達の事情が色々聞きたかったから。」
「一体タミル・ナードゥで何があったんだい?足の傷もまたぶり返しているし、ここに居た時よりも、随分調子が悪そうだ。」
「ティルバンナマライは楽しかったですよ。だた、食べ物とか少し身体に負担をかけてしまったみたいで、ずっとお腹の調子が悪くて。そのせいなのか、ぼんやりしがちなんです。」

 始めて入ったモンコンプの寺院は、ピンと張り詰めた神々しい空気に満ちていて鳥肌がたった。なんだか日本の神社に雰囲気が似てる。本尊の手前に長いコイル状のポールが建っているが、これは宇宙の背骨を現しているのだという。
「この建築全体が宇宙を表現しているんだよ。ブラーマンが毎日プージャするのは、本当は個人の願掛けとかそんな細かい事じゃない、地球全体、人類全体の為に日々祈りを捧げているんだ。」

 しばらく、彼と話をしながら辺りをうろついた。プラデープによると、師匠は精神的には高いところにいるけれど、肉体的には決して健康じゃなく、アーユルヴェーダ的に言えばヴァータのバランスが著しく乱れている、ということだった。多分事故の時の手術や投薬が原因だろうと言う。タミール・ナードゥに行って調子を崩したのも、移動したせいでヴァータのバランスが悪くなってしまったのではと。
「家族は彼のことをどう思ってるんだろう?」
「姉弟たちもジョシーに治療を受けさせたがっていて、色々アドバイスするんですが、知っての通り彼は全く受け入れません。頑固で難しい所があるので、最近は喧嘩が多いのです。だから、みんなジョシーはヨギだから一人で何とかできる、甘えないで一人で何かしてくれって思ってるみたいです。」
「あなたはどうなの?」
「私もそんな状況が気がかりですが、同じ気持です。彼はヨギだから一人で生きていくしかないのだろうと...」
「ジョシーは一人で生活できる健康状態じゃないよ。私は彼を放っておけない、あの家に一人で生活していたら、心身のバランスが取れなくなると思う。あそこは良くない。エネルギー的にはもう誰も使っていなくて死んだ家だ。水も綺麗じゃない。」
「はい、それはそうですね...」
「第一あんな不便な場所で、どうやって日々の食料を調達するんだ?あそこじゃ、町に出るのだって大変だ。彼の足では負担がかかるだろう?」
「近くに小さなが雑貨屋があって、そこで野菜は手に入ります。移動市場も来ます。
ジョシーは料理が出来ます。今までもずっと自分で作っていました。」
「シンプル・フードじゃダメなんだよ。今の彼の身体にはキチンと栄養のあるものを食べさせてあげないと。」

c0010791_2238145.jpg


 色々言われてかなりガツンと来た。私は何だかんだ言って、ジョシーはヨギなんだから健康なんだと思っていた。自分の身体を守る術は、自分で知っていると。ところがそうではなかったのか?彼はかつての健康で、厳しい修練をしていた頃のやり方で今も生活をしているが、もはや身体はそれについて行けなくなっているとしたら?
 ティルバンナマライでAさんに言われた言葉が蘇る。「これからはもう少し自分の身体に優しくする方を選んで下さいね。」と。
 何だか切なくなってきた。

「良い食事を食べて、いい環境の中で集中的にトリートメントをすれば、ヴァータのバランスは良くなってくると思うよ。肉体的に健康になれば、記憶の障害だって少なくなってくるはずだ。もちろん、無償では出来ないけど...」
「そうですよね....東京に帰って彼のお弟子さん達と話しあって、お金を出し合えないか相談してみます。」
「いやいや、日本でお金を出すと言ったら、逆に兄弟たちが何もしなくなるだろう。まずは彼らに相談した方がいいだろう。大丈夫、私が何とかするよ、私は彼の事が好きなんだ。あまり心配しないで、私にバトンタッチしたから今回のあなたの仕事は終わりだよ。日本に帰ってやるべきことをやりなさい。」

 結局2時間以上話し込んでしまった。どうもまた忙しい展開になってきた。帰国まであと僅か、どうなることか。
[PR]
by umiyuri21 | 2014-07-25 22:37 | ヨガ滞在記


旅とヨガとイラストレーション。世界と身体と脳内をめぐる旅。


by 若山ゆりこ

プロフィールを見る

S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30

カテゴリ

全体
ヨガ
ヨガ滞在記
仕事
オリジナル雑貨
ベリーダンス
アート
音楽
映画
旅行
BOOKS
日々の暮らし
美容
スウィート・モロッコ
未分類

最新の記事

New Year スペシャル..
at 2018-11-20 19:17
静かな部屋で
at 2018-11-13 11:33
ヨガの新クラス&WSのお知らせ
at 2018-10-26 23:06
今日は引っ越し
at 2018-10-09 12:30
墓参り
at 2018-10-02 23:42
10月のヨガレッスン
at 2018-09-30 23:33
踊るダキニ
at 2018-09-04 20:19
9月のヨガレッスン
at 2018-08-30 19:27
ケーララの洪水 (続)
at 2018-08-19 23:44
ウォーターランド
at 2018-08-17 23:15

以前の記事

2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
more...

twitter

記事ランキング

ブログジャンル

海外生活
スピリチュアル

その他のジャンル