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インディアン・ヨガライフ 第2ラウンド~最終回 

 長々続けてきたインディアン・ヨガライフ~第2ラウンド 今回で一応おしまいです。読んで下さったみなさまどうもありがとう。物語はまだまだ現在進行形ですが、それはまた、いつかの機会に。
 
インディアン・ヨガライフ 第1ラウンドはこちらから
第2ラウンドのVol.1はこちらから


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「最後のアーサナ」

 翌日からまたしてもバタバタし始めた。プラデープは早速、ジョシーの弟に電話をししばらくこちらでトリートメントを受けさせたいと申し出た。以前から、ジョシーの今後を考え、何らかの治療を受けてもらいたいと望んでいた姉弟たちは、早速話し合って、とりあえず21日間のアーユルヴェーダのトリートメントを受けさせることになった。

 プラデープによると、寝る場所をあっちこっち変えるのはヴァータのバランスにとって良くないし記憶の混乱につながるので、このまま家に帰らず荷物だけ取りに帰ってプラデープ家に滞在して、私が帰国した後トリートメントをスタートさせる流れになった。
 というわけで、再度ノース・ヴェリヤナードの家に戻ってスーツケースに荷物を詰め、モンコンプに運び込む。やれやれ、今回は何度この作業をしたことか...。結局最後の一ヶ月半はほとんどボストン・バッグ1個の荷物で生活していたような気がする。じゃあ、重いスーツケースのこの中身は何だったのだろう...?
 
 ケーララのバック・ウォーター周辺の村々は周囲を運河に囲まれ、家までの路地は細くて車では入れず、途中に丸木橋などもあったりして、スーツケースの移動には全く向かない。重すぎるスーツケースを一人で持ち上げて運ぶことも出来ず、いつも男性の手を借りることになる。それを持たされた人は「重いなあ、これ一体何が入ってるんだ?石でも入ってるのか?」とこぼす。
 そうですね...次回は極力余計な荷物は持って来ません。自分で運べる量だけを持ってきます。そうじゃないと、移動が思うようにできなくて、不自由極まりない。

 ジョシーの家で荷物の整理をしていると、彼がぽそっと私に私に言った。
「今夜はどこに泊まるんだい?」
「今日から、プラデープの所に泊まるんですよ。彼の所でトリートメントを受けることになったんです。足の傷もちゃんと治して下さいね。」
「じゃあ、しばらくは何処に泊まるか考えなくていい訳だ。ありがとう。」
珍しく気弱な発言にズシッと心が傷んだ。やっぱり、いくらヨギだって若くもないし、不自由な身体で日々寝る場所も定まらずあっちこっちと泊まり歩くのは、結構負担になってたんだなあ。もしかして私に付きあわせて、随分先生を疲れさせてしまったのかもしれない。
 トリートメントといっても3週間だし、プラデープはその後もしばらく家に滞在していいとは言っていたが、今後の師匠の生活がどうなっていくか、全く読めない。ともかく足の傷ぐらいは完全に直して少しでも元気になって欲しい。
 近くに住んでいて、伝統医療の知識のあるプラデープがジョシーのことを気にかけてくれる、というのは本当にありがたいことであった。私も肩の荷を少しは降ろして、東京に戻ることが出来る。

 プラデープも先日私に言っていたが、彼がヒマラヤのスパで働いていた頃、沢山のヨギに出会ったが、家族との縁を自ら断って修行する人々の晩年は孤独で、大抵似たような問題を抱えているんだよと言っていた。
 はじめから社会的な安定など目指していないのだから、それは請け負わねばならない運命なのかもしれない。修行者が目指すのは家族に囲まれて、のんびり安らかに過ごす老後じゃない、どんな環境にあってもブレない自分の内側の絶対的な至福なのだから。
 例えそうであっても、なんとも複雑な気持ちになってしまう。

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 ケーララ最後の数日間をプラデープの家で過ごした。ご飯を作る心配もないので、昼はテラスで寝転んで呆けて、アシシュが爆音で流す音楽に合わせて踊ったりした。朝と夕方にはヨガをやった。
 ちょうど隣の寺院では年に一度の大きなお祭りが始まりつつあった。何でもこの付近では有名なお祭りとかで、2週間位の間、カタカリダンスや伝統芸能や音楽などが絶えず上演されるらしい。
「来年は絶対お祭りの時期を逃さずに来なさい。素晴らしい物が沢山見られるから。」とプラデープに言われた。確かに4月に入ると一層気候は暑くなったが、なんとなく周囲の空気も華やぎ、マーケットには美味しそうなマンゴーがゴロゴロと並び、フルーツの種類も豊富になった。季節が変わったのだ。
 かろうじて最後の夜に、お祭りのスタートを切る儀式として「カバディ」と呼ばれるダンスを見ることが出来た。
 三角の糸杉のような形の1.5メートルくらいの細長い帽子をかぶった若者たちが、ドラムに合わせて踊りながら行進する、というダンス自体は素朴なものだが。聞く所によると、ダンサーたちはこの日の為に40日間禁欲生活をし、寝ずに寺院から寺院へ踊りながら移動するらしい。
 翌朝再び、この寺院へ戻って来るのだがその頃にはトランス状態に入っていて、激しく踊りながら、自分の頬を串刺しにしたりするんだとか。う~ん、それはちょっと見て見たかったが、楽しみは今度のために取っておくとしよう。

 とうとう出発の朝がやって来た。早起きして、家の前の運河に入り軽く洗濯をした。最初は汚いのでは、とちょっと遠慮していた川での洗濯もいつの間にか気持ちが良くてすっかりお気に入りになっていた。
 早朝の水面は静かで穏やかで澄んでいた。ケーララの爽やかで美しい朝も、しばしのお別れだ。
 最後に荷物をまとめ終わると、ジョシーがちょっとヨガをやる、と言い出した。グルジたちの写真が並ぶ瞑想ホールに坐って、最後にいくつかアーサナを行った。
 両膝を曲げて坐って踵を合わせ、背中を真っ直ぐに伸ばしてそのまま前屈する。バッダ・コーナアサナというポーズ、シンプルだが背中を真っ直ぐにしたまま前屈させそのままキープさせるのは、なかなか苦しい。
 師匠は上半身を前屈させ、床に顎を付けたまま静止する。そのまましんと動かない。あまりにも動かないので、どうしちゃったの?とこっちがそわそわしてくる。朝の川べりの空気と完全にシンクロし、波の立たない川面の澄んだエネルギーがこの部屋の中にまで流れ込み、満ち溢れてくるようだった。
 それに比べたら、私のエネルギーは全く落ち着きがなく、かさこそとすぐ動き出して、息が乱れ、早く起き上がりたくてウズウズしている。
 ようやく師匠が半身を起こし、じっと動かないまま私を見つめる。その時はたと合点した。「そっか、これが彼の言うアーサナなんだ。」
 
 こんなシンプルなポーズであっても、美しいアーサナであることは簡単ではないのだ。そこに在り、満ちているエネルギーの美しさに感動し、気が付くと涙が出ていた。
 「今のアーサナを見て、これがアーサナなんだって、今分かりました。最後に大切な事を教えてくれてありがとうございます。」
 「私も、最後に綺麗なアーサナを見せることが出来て、うれしいよ。」
 しばらく、無言でそこに佇んでいると階下からプラデープの声がした。
 「朝食ができてるよ、急がないと迎えのボートが来る。」

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 食堂へ向かう途中ジョシーが不思議な事を私に告げた。
「人生で何かが起こったとしても、それを問題だとは思わないで下さい。それは問題ではありません、それも人生の別な面にすぎないのです。」
 
 最後にラージさんの作ってくれたチャパティとダルの朝ごはんをいただき、家族に挨拶をして慌ただしく出立時間が近づいてくる。タクシーの待つ対岸まで荷物を運ぶためのボートがやって来た。ジョシーは空港まで見送りに来てくれる事になっていたので、一緒にボートに乗って、プラデープ一家に別れを告げる。
 ボートに乗り込むと水面を滑るようにプラデープの家を離れていく。さようなケーララ、そしてここで知り合った多くの友よ、本当にありがとう。また近いうちに必ず来ます。

 
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  川向うに待っていたタクシーに乗ってしまうと、後はもう、そのままインドの出口へ向かうだけ。運転手は現役の警官で、アルバイトでタクシードライバーをやっているらしい(そういうのいいのか?)典型的なツーリスト慣れしたドライバーで、興味本位であれこれ聞いてくるので、ジョシーが猛烈に不機嫌になり、喧嘩するのではないかとハラハラした。道中、渋滞もなく2時間もかからずにコーチン・エアポートに着いてしまった。
 
 空港の駐車場に停めると余計な料金がかかると言われて、空港での停車時間は5分のみ!と言われる。出発入り口にさっと車を止め、てきぱきとと荷物を下ろす。ドライバーにお金を渡すともう長居は無用。「さあ、もう行かなくちゃ」と彼はすぐに立ち去るべく扉をしめろと言う。急いでジョシーにまたヨガを習いに来ますと約束して、ハグをし、手を振って別れる。車は慌ただしく立ち去っていく、ドライバーもこれから自分の本職仕事が待ってるんだろう。
  
 しばし放心。

 冷房の効いた涼しい空港にチェックインし、さっさと搭乗ゲートまで行く。ふとミルク入りのコーヒーを飲んでみたくなって、注文する。今回はよくやった、やることはちゃんとやった。だからミルクコーヒーくらい飲ませてもらおう。プラデープも牛乳は時々飲めって言ってたし、4ヶ月ぶりのミルク飲料。空港だからあんまり美味しくなかったけど。

 とりあえず旅は終わったんだな、さあ、東京へ帰るとするか。
by umiyuri21 | 2014-07-27 20:56 | ヨガ滞在記


旅とヨガとイラストレーション。世界と身体と脳内をめぐる旅。


by 若山ゆりこ

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