イスタンブール番外地物語(長編)

c0010791_11645100.jpg  昨日は「eskiya」というトルコ映画を観た。96年の作品なのだが、ずっと見たいと思っており、7月にイスタンブールに行ったときにDVDで買ったのだ。
 96年の冬、私と夫は無謀な長旅の最中で、すっかりイスタンブールが気に入って2ヶ月ほど安ホテルでうだうだと過ごしていたのだった。(結局行ったり来たりで正味半年居ることになった。なのに当時はベリーのベの字も興味がなかった・・。)その時仲良くなった日本人旅行者がすごく面白いからと薦めてくれたのがこの映画だった。しかし旅の好奇心を随分失っていた私たちは、すぐには見にいこうとはせず結局いつのまにかその映画は終わってしまっていた。すでに何回もこの映画を観ていた友達は一生懸命そのあらすじを説明しつつ、面白さを語ってくれたので、なにかとんでもなく惜しいモノを見逃したような気分にさせられてしまったのだ。それでこの「eskiya」(エシュキヤと読む)というタイトルは、イスタンブールの冬の思い出と一緒にずっと心に引っかかっていたのだった。
 
 さて、9年越しでようやくその映画を見ることができたのだ。
 ストーリはなんというかトルコの過剰な任侠オヤジ映画だったのだが・・。
 仲間の裏切りに会って、35年間刑務所入っていた元山賊(eskiyaは山賊の意味)男が出所してくる。自分を裏切り、婚約者まで奪っていった仲間を追ってイスタンブールにやってくる。その途中でチンピラの若者と知り合い、友情が芽生える。で、山賊は裏切った仲間を見つけ婚約者とも再会したりと色々あったりもする。一方、チンピラは恋人のためにマフィアの親分から麻薬をちょろまかし、女にも裏切られて、激怒して女を射殺。麻薬を盗んだのが発覚し親分につかまってピンチ!チンピラを救おうと山賊は奔走するも、結局チンピラは殺され、激怒した山賊は銃を大乱射して、警察に囲まれて最後は激死!
 とあらすじを書くとしょーもない映画みたいだけど、なんとも人情味と哀愁たっぷりのイスタンブール情緒溢れたイイ映画だった。むせび泣くようなハルク(演歌)も効果的に挿入されてる。「ベンゴ」や「血の記憶」に共通する、地中海諸国の男映画特有の「無駄死に」感がなんとも言えない・・。それにちょうど10年くらい前のキレイになるまえのイスタンブールの風景が映し込まれている。この作品、トルコではヒットしたらしく、海外の映画祭でも招待されたらしいのだ。

 イスタンブールっておやじの任侠映画が本当に良く似合うんだ。
 私たちが96年に滞在していた安宿には、夜になるとマネージャーの友達のいい年したおやじどもが集まってきていつもラクを飲んでいた。みんな40過ぎだけど独身で、職もちょくちょく変わっているような連中だった。ホテルのオーナーはその中で唯一大卒でいい暮らしをしているようだったが、ちょっと酒乱気味で飲み過ぎるとみんなに煙たがられていたっけ。いい大人なのに絶交しただのなんだの言ってるし。私たちも何をやるでなくヒマだったからそういうオヤジ達とラクを飲んでいるのが楽しかった。だから、けっこう映画の中のチンピラ達の任侠ワールドがリアルに感じるのだ。

 私は日本の古い映画とかはよく知らないのだが、日本の古いやくざ映画なんかも似たような感じなのかな。日本もそんな任侠映画なんてもう流行らなくなってしまったけど。任侠映画って発展途上国が発展していく途中に生まれてくるもんじゃないのかなと思ったりする。持たざるモノと持っているものの差がハッキリしているけれど、持ってない人が持つものになる夢を見ることができる社会。混沌としていて、何してるか分からない人、ぶらぶらしている人、その日暮らしの人、一旗揚げてやろうと夢見てるチンピラとかがまだ居場所のあるような社会・・。
 今年久し振りにイスタンブールに行ったけど、随分キレイになっていて、道ばたで靴磨きをしていたり、露天商のオヤジ達が心なしか寂しげに見えた。私たちだってもう、ひまなオヤジとぶらぶらしている時間はなく、ショッピングだ取材だクラブだので、やけに忙しいのだった。

 それでもある一日、気になって昔の安宿のマネージャー達はどうしているのか、消息を探しに行ったのだ。当時泊まっていた宿はすでになくなっており、見知った顔でもないかとスルタンアフメットをうろうろしていると、よくラクを買いに行った酒屋の隣にある、土産物屋のおやじに客引きされた。彼も時々宿にラクを飲みに来ていた一人だ。はじめオヤジは私たちを覚えていないようだったが、「ほらアヤソフィアホテルで飲んだじゃない!」と言うと、思い出し「やあ!兄姉」と突然親しげに抱きついてきた。
さて、そこで他のオヤジ達の消息を訪ねたところ、アル中気味だった宿のオーナーはホテルを手放した後、韓国料理屋のマネージャーになったがそれ、長続きせず、ますます酒浸りになっている。マネージャーは時々現れるが、何をして暮らしているかわからないとのこと。
上手くやっているように見える土産物屋のおやじも「おれも2年前に離婚したんだ、つらかったよ・・。でも今度は日本人と結婚しようって決めたんだよ!誰か紹介してくれ!」などと真顔で語っている。
 
 「ところでTはどうしている?」と土産物屋のおやじに聞かれて私たちは口ごもった。Tは私たちに「eskiya」を薦めてくれた旅行者のことだ。「うん・・元気だよ。」と言っておいた。Tは実は今服役中なのだった。いけないものを日本に持ち込もうとしたかどで・・。

 昨日「eskiya」を見て、刑務所に入っていた主人公と友達の顔が重なり、複雑な気持ちになった。友達に「eskiya」見たよって手紙書こうか、ってしんみり話し合った。

 あ、私たちもなんだか任侠おやじみたいになってない?

 来る9月25日(日)開演17:30〜 
アップリンクファクトリーで「サラーム海上のエキゾ夢紀行 イスタンブール番外地編」を行います。
ベリーダンスや、スーフィー回転舞踏、メルジャン・デデのライブ映像、民謡酒場などなど盛りだくさん!
アラブではないアジアの果ての街イスタンブールの「番外地」な雰囲気を味わってもらいたいと思っております。「eskiya」も一部流そうかと・・。サラームの「トルキッシュプレート」も用意しておりま〜す。
詳しくはこちら!http://www.uplink.co.jp/factory/log/000727.html
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by umiyuri21 | 2005-09-22 01:21 | 旅行


旅とヨガとイラストレーション。世界と身体と脳内をめぐる旅。


by 若山ゆりこ

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