全て土に還る

ジョシーの実家で生活していた数年前…
ジャングルの村での生活は、図らずもエコロジーライフであった。というのも、村ではゴミの収集システムなどはなく、自分で全て処理しないといけなかったから。通常村では犬や牛を飼っていて、食事の余り物は彼らが食べる。私が住んでた家には家畜はいなかったので、なるべく食事は余らないように気をつけていたが、野菜クズなどは木の根元にでも捨てておけば、翌日鶏や犬が食べに来て残りは土に還る。紙ゴミは燃やす。困るのはペットボトルなどの燃えないゴミ。
ジョシーの家族に聞いても、その辺に置いていけばいいと言われたが。ペットボトルは油断するとどんどん増えるので、あまり買わないように心がけていた。水は井戸水をフィルターでろ過した物を飲んでいた。地元の人たちもボトルの水はあまり買わず、自宅でろ過した水を水筒に入れて持ち歩くのが一般的だ。
トイレットペーパーも燃やす手間を省きたかったので、インド式で通した。ティッシュペーパーの類もほとんど使わなかった。そもそもケーララの普通の家庭には、トイレットペーパーもティッシュペーパーも置かれていないから、そういう中で生活しているとだんだんそれが普通になってくる。
家の周りに広がるジャングルはは巨大な浄化装置だった。オーガニックなゴミならジャングルが全て請け負ってくれた。昨日書いたが、ネズミなどの死体は土に埋めたし、家の中の埃や虫の死骸も家の外に捨てていたし、腐った野菜やバナナの皮もゴミ箱に捨てずに窓から外に放り投げていた。紙くず類もジャングルの片隅で焼いた。
その全てをジャングルは吸い込んでいった。時に、人間の身体の身体ですら。
この辺りでは人が亡くなると、自宅の裏庭で火葬をした。
その儀式に何度か参列したことがある。土を浅く掘り、白い布で巻きつけた遺体を置く。そこに牛糞の燃料、乾かした芝のような植物をきっちり重ねていく。最後に火を入れる穴を残して、泥で覆いをかぶせると窯のような状態になる。そこに火をくべてじっくり火葬する。遺体が燃え尽きるまで3日くらいかかる。遺体が灰になった3日後にまた儀式がある。
一度家のすぐお向かいの住人が亡くなって火葬をした時は、遺体を燃やす匂いが夜中ダイレクトに家に入って来て、かなりしんどかった。まさに死んで人は土に還る、それを目の当たりにした。一体どれだけの身体がこのジャングルで燃やされたのだろう。(ちなみに家で火葬をするのはヒンドゥー教の家だけで、クリスチャンはお墓に土葬する。)
ジャングルに吸い込まれた身体は、豊かな実りとなって再生し、私たちの命を繋いでくれる。そしてインドでは、燃やした後に残る灰は、変化しない最後の物質として、とても神聖視されている。
ジャングルの中の生活は本当に生命の大きな循環装置の中にすっぽり包まれているようだった。その中では人間も循環の中で生かされている生命のひとつにすぎない。
全てを飲み込んでしまう深い受容。大地は豊かで艶めかしく、同時に容赦がない。
旅とヨガとイラストレーション。世界と身体と脳内をめぐる旅。
by 若山ゆりこ
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