熱海の小さなミラクルの家

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月曜日から熱海に二泊三日の小旅行。駅から急な坂道を登って20分強くらいの、伊豆山の中腹にある小さな家に泊まっていた。

実はここ、私が菊名で住んでいるシェアハウスの主宰者、坂爪圭吾さんの持ち家。そして菊名の母屋と同様に、希望者には無料で開放しているのだ。


坂爪さんはご存知の方も多いと思うが、非常に鋭く新しい時代の精神に切り込んだ、心に迫るブログを書き続け、多くの読者を持っている。その繊細かつ、権力や常識に屈しない心意気ある文章を、私も時々インドの空の下で読んでいた。


もともと彼は数年前に同棲中の彼女と別れたことをきっかけに家をなくし、それならば家の持たない生活をしてみようと、その生活の様子をブログに書き、やがて読者から、うちに泊まりに来てくださいというオファーが来始める。それに応じて日本全国海外までも泊まり歩き、お話会を開くようになり、そして2年経った頃、ブログの愛読者の一人から、この熱海の家を購入(!)してもらうことで、家のない生活に終止符が打たれた。


現在彼は菊名の家と熱海の家を行ったり来たりしていて、両方とも無料で開放されている。菊名の家の方は購入したのではなく、シェアハウスの賃料とクラウドファンディングや寄付などで、母屋のフリースペースが運営される仕組み。ということで、いきなり家なし生活から、家が二つになった訳だけど、本人は全く「自分の家」という所有概念に縛られていないのがすごい。(菊名の家では、彼は庭に常設されたテントで生活している。)


なので、私が「熱海の家に泊まってみたいんですが」とお願いすると、「はい、どうぞ」と、快いお返事が返ってきた。

住所を頼りに、細い坂道を下る。途中雨が降り出し、迷ってしまったので、通りすがりのおばさん道を尋ねると、「ああ、この先よ」とすぐに案内してくれた。

それは小さな古い日本家屋で(築88年!) 、玄関にキャンプ用の椅子とストーブが置いてあった。ちなみに、菊名の母屋と同じく、この家も施錠されていない。

おもむろにガラガラっと扉を開けると、二間続きの和室の凛とした空間が「いらっしゃい」と無言で迎えてくれた。


これが何とも可愛らしくて、気持ちいい住まいなのだ!小さい頃遊びにいった祖父母の家を思い出すけれど、坂爪さんのセンスで、古い佇まいを壊さぬまま、さりげなく本当に素敵なインテリアで空間を作り上げている。

正直私この家に惚れました。家の細かい細工が何もかも、レトロで可愛いすぎる。(今時サッシですらない窓!)外見の小屋っぽさもたまらない。細い坂道を歩く家までのアプローチもツボ、しかも路地の間から海が見える!


余計なものはないけど、必要なものはちゃんと揃ってる心配り。お布団、シーツ、タオル、シャンプー、お米、調味料類などなど、スピーカーもありますから、好きな音楽を流して、縁側の椅子に座ってお茶を飲みながらボーっとする。マジで最高。


何だかこういう情景、童話でありそうだと思う。森の中を迷って小さな家にたどり着き、扉を開けると誰もいないけど、全てが快適に設えられていて、食事まで用意されている、みたいな。

ここでおとぎ話だと、その家で油断してくつろいでると、夜中に魔女に食べられそうになったりするけど、この家はただただ、訪れる人のために快適に整えられて、必要なものが用意されている。ただより高いものはないとか、うまい話には裏がある、というような古い教訓を気持ちよく覆してくれる場所なのだ!


二泊三日で泊まりに来て、あいにくずっと雨続きだったけど、お茶飲んで、瞑想して、ご飯食べて、音楽聴いてと楽しく一人リトリートさせていただいた。帰る頃にようやく太陽が差してきたけど、近所散策は次回にさせていただきましょう。そうそう、玄関からは海も見え、海から登る朝日や月も堪能できるそう。


さらに玄関には、お気持ちがあればお金を入れ、そして必要な人は持って行ってくださいという、出し入れ自由のお財布がある。こんな財布がぶら下がってって、しかも鍵がかかっていないという。こんな事が出来るのは世界広しといえど、日本だけではないかしら?少なくともインドじゃ絶対にできませんって。


帰り際、幾ばくかのお金を財布に入れ、鍵をかけずに外に出る。横浜に向かう電車に揺られながら、あの家に泊まった後と前とでは、所有に関する価値観にジャブが打たれて風穴が空いたように感じる。これは何気にすごいんじゃないか、と思う。誰もが泊まれる家、しかも善意だけでなくセンスがあるのが素晴らしい。その美しさが、無差別に開かれているということが。

無償なんだから泊まれるだけでありがたいでしょう。っていう空間じゃないことが。この違いは物凄く大きいと思う。


この家を出た後、いつのまにか、「人から何かを与えられたら、それに値する返礼を本人に返さなければならない」という概念が崩壊していることに気がつく。ただシンプルに美しい何かを、自分も世界に放ちたいと感じている。


多分それが、交換ではなく循環の始まりなんだろう。



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by umiyuri21 | 2018-05-09 21:12 | 日々の暮らし


旅とヨガとイラストレーション。世界と身体と脳内をめぐる旅。


by 若山ゆりこ

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