ウォーターランド

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ケーララから、今年は雨が酷く洪水の被害が出ている知らせが届く。被害は日本でも報道されているほどだ。もともとケーララ州、特に南部の海岸沿いのエリアは、運河や川の入り乱れる水郷地帯で、海抜ゼロ以下の土地で稲作が行われている世界でも珍しい場所でもある。雨季の時期は道路が冠水するのはよくある事らしい。


私のヨガの師匠ジョシーの実家は、そんな水郷地帯の村のど真ん中にある。ケーララ通い始めた最初の3年は、そこで毎年数ヶ月暮らしていた。家の周りは運河が通り、少し先には川がある。 その村自体も地図を見ると川と湖の間にある中洲のような場所で、まさに水に囲まれた土地だった。今ではバス道路があるものの、それが出来る前は、交通手段は船しかない。人々は自家用ボートを持っていて、先生もそれで学校へ通ったのだという。

雨季で雨が続けば、村も水浸しになるので、雨の一番激しい時期には家族で内陸の高い土地に住む親戚の家に、避難ついでに泊まりに行くのが習わしだったらしい。


バス道路が通ってから生活は激変したと先生は言うが、幹線道路から村へ至る道はその一本しかなく、その道もすぐ先の川で終わってしまう。だから水で道路が一箇所寸断されても、村は孤立する。いつぞや、雨季の後の道路工事で夕方以降道が通行止めになり、知らずに町へ出てしまった私たちは家まで戻れなくなった。ものすごく周り道をして、川を何度も渡し船で渡ってようやく帰宅した思い出がある。


そんな村の生活は不便極まりなかったが、水と緑に囲まれた風景は本当に素晴らしかった。今でも渡し船や一人用の小さなボートが現役で活躍していたし、買い物しに町まで行った帰りに、パブリックボートで家まで戻って来るのもお気に入りのルートだった。

その後先生は足が悪くなって、不便な村では生活できなくなり、今はカンニャクマリにいる。以来そこを訪れたのは一度だけだ。先生が去ってから、その家は誰も住む人がいなくなり、ジャングルの中に放置された家は、湿気で大分痛んでいた。


昨日先生の弟から、村はすっかり水浸しだよ、家はかろうじて無事だけどね、と連絡が来た。久しぶりに当時の写真を取り出して眺めていた。安い携帯のカメラであんまり画質は良くないけど、普段の村の生活で目にした風景を残した写真は、今では宝物だ。写真を見ると当時の自分の気持ちまで蘇ってくる。

あの時は虫やら湿気やら暑さやらで不満タラタラだったけど、こんな場所で生活できるなんて滅多にない体験だった、あんな所でよく暮らしたなあ、と今は楽しい思い出しか残っていない。あの村の人々は無事だろうか?

被害がこれ以上広まることがないよう、祈りながら

しばし水の記憶に想いを馳せる。





by umiyuri21 | 2018-08-17 23:15 | ヨガ滞在記


旅とヨガとイラストレーション。世界と身体と脳内をめぐる旅。


by 若山ゆりこ

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