イエメン日記4〜女がいない
まだ続きます。こんな長文付き合ってくれる人少なそうだけど・・。やっぱりそれなりにカルチャーショックの多い旅だったのでしょう。
この国では女性の姿が見えない。イスラム圏の国は随分多く旅した気がするし、ヴェールをかぶったムスリム女性=抑圧されている可哀想な存在、なんて紋切り型の意見を持っているつもりもないが、ここまで社会の中で女性が隔離されていると、やっぱりバランスがとれていないのではないか、と、考え込んでしまうことが多かった。
今まで旅した中で、イエメン以外に女性と男性が最も隔離されていたのは、イランだった。女性はほぼ全員、カラスのような真っ黒コートをまとっていて、バスの中も男女別々。旅行者もヴェールで髪を隠すのが原則で、旅行中もラマダン中だったせいもあり、夫婦じゃないカップルが泊まりに来ていないか、ホテルに宗教警察がチェックしに来ていた。かなり息が詰まった。
それでも、イエメンよりはまだ女性の顔が見えた。一応顔は隠してなかったからね。都市部では前髪を覗かせて軽くヴェールを被って、お洒落なコートを着ている女性もいたし、映画館で隣り合ったおばちゃんからお菓子をもらったりもした。私たちが道を歩いていると、女性の集団が物珍しげにこっちを見て「どこから来たの?」と話しかけられたりもした。
でも、イエメンではそういうことは一切起こらなかった。
何しろほとんど全員、カラスのコートを被って、顔もほんのわずかな目の部分を覗かせているだけ。薄い布で顔をおおって、完全に顔を隠している人もいる。道で目があって微笑みかけられるなんて事は絶対絶対あり得ない。この徹底はイスラムの服装規程と同時に、他部族の男性から邪視を受けることを嫌う、山岳部族社会の文化のせいでもあるらしい。
イエメンではイランのように、外国人旅行者が、髪や身体を隠すようには規則づけられはいない。でも、結局街をウロウロしているうちに、カラスコートまではいかずとも、にわかムスリムスタイルで街を歩く方が、都合が良いことに気づく。高地であるサナアでは、日差しが強烈で空気が乾燥している。だから帽子より布を頭に巻いている方が、風通しが良く、埃や日光から髪や首筋までを守るのに都合が良い。埃っぽい場所では、布で口を覆うこともできる。紫外線が強いので、半袖なんて自殺行為。風通し良いゆったりした服を着るのが、昼の暑さと夜の寒さに同時に対応できるベストなスタイルなのだった。おまけに、そうして髪と身体を隠していれば街の人々の視線も心なしかおだやかな気がする。
服装問題はそうやってやりすごしたが、街に女性がいないというのは、女性の旅行者にはなんとも居心地が悪い。男子校にうっかり紛れ込んでしまった女子。と想像してみて下さい。外国人は治外法権的に、男性の場所に足を踏み入れても文句は言われない。それに、夫と一緒だったから嫌な目に遭うことはほとんどなかった。しかし、どこに行ってもここにいていいのかな〜・・。居てはいけないところに居るのではないかと、どうもリラックスできない。
シェイクのお家におじゃまして、カートをごちそうになっても、オヤジどもと一緒に噛んでいては、例え良い気分になっても羽目を外せないではないか。音楽が始まって男どもが、手をつないで伝統的なジャンビーヤダンスを始めても、そこにうかつに混じる訳にはいかない。セマみたいに踊り始めたら、一同仰天どうなっちゃうんだろうと、想像してして一人笑うしかない・・。それでも時には誘われて、自分も踊ってみたいので、混じってはみるが、果たして自分の妻、姉妹以外の女性の顔を見る機会がない世界で、見知らぬ女性と手をつなぐと言う行為が相手にとってどれほどの意味を持つのか・・・と想像するとちょっとコワイ・・。それに妙に脂ぎった手で、にぎ〜っと強く握られたすると、ひょえ〜っと冷や汗が出てくる・・・。あ〜こんなに素敵なウードの生演奏があるのに・・じっとしていなきゃいけないなんて・・とストレスが溜まるったらない。
イスタンブールで、セマみたいな破天荒でクレイジーな女性と一緒に過ごした後のこの落差は大きい。同じイスラム圏の国でも事情はこんなに違うわけだ。
シェイクの親戚の結婚式に行ったとき、特別に女性の部屋に入れてもらった。その日は花嫁が、花婿の実家にやってくる儀式の日で(多分そういう流れだったと思う。)新居には親戚の女性陣で溢れていた、ヴェールを脱いでいるかと思ったら、顔こそ出してはいるものの、みな黒い外套を羽織ったままだった。女性の好奇の視線を浴びつつも、野郎の世界に居るよりはなんとなく落ち着いた。
しばらく待っていると、庭で花火が激しく上がり、車がクラクションを鳴らして到着し、黒い布を被って姿を隠された花嫁が、男性の親戚に運ばれてやってきた。(だからみんな黒い外套着てたんだ。)そのまま寝室に直行した花嫁は、15分くらいすると、美しいウエディングドレスに着替えて登場した。みんなユーユーと手拍子、囃し歌で歓迎する。花嫁はにこりともしないで緊張した面持ちで現れたので、そこに居たのは花婿側の親戚女性だったのかな。とにかく、腕や手に細かいヘナを施され、髪もモダンにカットし、ドレスも高価そうで露出度もかなり高い。アーモンドの形の目をしたすごい美人だったけど。花婿以外の男性の親戚、友人達は決してその姿を見ることは一生ないのである。
ちなみに、花嫁が家に運ばれた後、花婿が家に入る儀式があり、多分2人はそのまま寝室に直行して、って流れになるらしい。新郎新婦の寝室も見せてもらったが、真新しいベットにハート型に花がちりばめられていた。今や私たちの世界ではあんまり重みのない「初夜」という一夜が、この国の結婚式では果てしなく重要な意味をもっているんだろうな〜。そう考えると花嫁の緊張した心が伝わってくるようでなんだかドキドキした。
「この国の結婚式では、男女が結婚することのミステリアスさを実感できるよ!」とマイケルは言っていたけれど、男性のミステリアスの追求に女性が犠牲になっている気もしないではない・・。
やっぱり社会には女性の視点も大切だと思うよ。この国のこの飾り気のなさ、ホテルや食堂の掃除のいい加減さはやっぱり、男社会だからに違いない。ホントどこに行っても汗臭い男子校の部室みたいなんだもん。お洒落心のかけらもないんだ。きっと消費ってものは、女性がお金を使えたり、女性が喜ぶ物を生産することで活性化するんじゃないかと思うんだどね・・。カートばっかりじゃなくて、目に美しいお菓子とか、食器とか、アクセサリーとか・・。新市街のハッダストリートにはそういう小ぎれいなお店も出来つつあるというが・・。
世にも美しい古い町並みを歩きながら、ここに居心地の良いおしゃれ〜なカフェがあったらどんなに素敵なことか・・と何度思ったことでしょう。でも、10年後もそれが実現していなさそうな所が、この国の良さだったりするのかもしれません。
この国では女性の姿が見えない。イスラム圏の国は随分多く旅した気がするし、ヴェールをかぶったムスリム女性=抑圧されている可哀想な存在、なんて紋切り型の意見を持っているつもりもないが、ここまで社会の中で女性が隔離されていると、やっぱりバランスがとれていないのではないか、と、考え込んでしまうことが多かった。
今まで旅した中で、イエメン以外に女性と男性が最も隔離されていたのは、イランだった。女性はほぼ全員、カラスのような真っ黒コートをまとっていて、バスの中も男女別々。旅行者もヴェールで髪を隠すのが原則で、旅行中もラマダン中だったせいもあり、夫婦じゃないカップルが泊まりに来ていないか、ホテルに宗教警察がチェックしに来ていた。かなり息が詰まった。
それでも、イエメンよりはまだ女性の顔が見えた。一応顔は隠してなかったからね。都市部では前髪を覗かせて軽くヴェールを被って、お洒落なコートを着ている女性もいたし、映画館で隣り合ったおばちゃんからお菓子をもらったりもした。私たちが道を歩いていると、女性の集団が物珍しげにこっちを見て「どこから来たの?」と話しかけられたりもした。
でも、イエメンではそういうことは一切起こらなかった。
何しろほとんど全員、カラスのコートを被って、顔もほんのわずかな目の部分を覗かせているだけ。薄い布で顔をおおって、完全に顔を隠している人もいる。道で目があって微笑みかけられるなんて事は絶対絶対あり得ない。この徹底はイスラムの服装規程と同時に、他部族の男性から邪視を受けることを嫌う、山岳部族社会の文化のせいでもあるらしい。
イエメンではイランのように、外国人旅行者が、髪や身体を隠すようには規則づけられはいない。でも、結局街をウロウロしているうちに、カラスコートまではいかずとも、にわかムスリムスタイルで街を歩く方が、都合が良いことに気づく。高地であるサナアでは、日差しが強烈で空気が乾燥している。だから帽子より布を頭に巻いている方が、風通しが良く、埃や日光から髪や首筋までを守るのに都合が良い。埃っぽい場所では、布で口を覆うこともできる。紫外線が強いので、半袖なんて自殺行為。風通し良いゆったりした服を着るのが、昼の暑さと夜の寒さに同時に対応できるベストなスタイルなのだった。おまけに、そうして髪と身体を隠していれば街の人々の視線も心なしかおだやかな気がする。
服装問題はそうやってやりすごしたが、街に女性がいないというのは、女性の旅行者にはなんとも居心地が悪い。男子校にうっかり紛れ込んでしまった女子。と想像してみて下さい。外国人は治外法権的に、男性の場所に足を踏み入れても文句は言われない。それに、夫と一緒だったから嫌な目に遭うことはほとんどなかった。しかし、どこに行ってもここにいていいのかな〜・・。居てはいけないところに居るのではないかと、どうもリラックスできない。
シェイクのお家におじゃまして、カートをごちそうになっても、オヤジどもと一緒に噛んでいては、例え良い気分になっても羽目を外せないではないか。音楽が始まって男どもが、手をつないで伝統的なジャンビーヤダンスを始めても、そこにうかつに混じる訳にはいかない。セマみたいに踊り始めたら、一同仰天どうなっちゃうんだろうと、想像してして一人笑うしかない・・。それでも時には誘われて、自分も踊ってみたいので、混じってはみるが、果たして自分の妻、姉妹以外の女性の顔を見る機会がない世界で、見知らぬ女性と手をつなぐと言う行為が相手にとってどれほどの意味を持つのか・・・と想像するとちょっとコワイ・・。それに妙に脂ぎった手で、にぎ〜っと強く握られたすると、ひょえ〜っと冷や汗が出てくる・・・。あ〜こんなに素敵なウードの生演奏があるのに・・じっとしていなきゃいけないなんて・・とストレスが溜まるったらない。
イスタンブールで、セマみたいな破天荒でクレイジーな女性と一緒に過ごした後のこの落差は大きい。同じイスラム圏の国でも事情はこんなに違うわけだ。
シェイクの親戚の結婚式に行ったとき、特別に女性の部屋に入れてもらった。その日は花嫁が、花婿の実家にやってくる儀式の日で(多分そういう流れだったと思う。)新居には親戚の女性陣で溢れていた、ヴェールを脱いでいるかと思ったら、顔こそ出してはいるものの、みな黒い外套を羽織ったままだった。女性の好奇の視線を浴びつつも、野郎の世界に居るよりはなんとなく落ち着いた。
しばらく待っていると、庭で花火が激しく上がり、車がクラクションを鳴らして到着し、黒い布を被って姿を隠された花嫁が、男性の親戚に運ばれてやってきた。(だからみんな黒い外套着てたんだ。)そのまま寝室に直行した花嫁は、15分くらいすると、美しいウエディングドレスに着替えて登場した。みんなユーユーと手拍子、囃し歌で歓迎する。花嫁はにこりともしないで緊張した面持ちで現れたので、そこに居たのは花婿側の親戚女性だったのかな。とにかく、腕や手に細かいヘナを施され、髪もモダンにカットし、ドレスも高価そうで露出度もかなり高い。アーモンドの形の目をしたすごい美人だったけど。花婿以外の男性の親戚、友人達は決してその姿を見ることは一生ないのである。
ちなみに、花嫁が家に運ばれた後、花婿が家に入る儀式があり、多分2人はそのまま寝室に直行して、って流れになるらしい。新郎新婦の寝室も見せてもらったが、真新しいベットにハート型に花がちりばめられていた。今や私たちの世界ではあんまり重みのない「初夜」という一夜が、この国の結婚式では果てしなく重要な意味をもっているんだろうな〜。そう考えると花嫁の緊張した心が伝わってくるようでなんだかドキドキした。
「この国の結婚式では、男女が結婚することのミステリアスさを実感できるよ!」とマイケルは言っていたけれど、男性のミステリアスの追求に女性が犠牲になっている気もしないではない・・。
やっぱり社会には女性の視点も大切だと思うよ。この国のこの飾り気のなさ、ホテルや食堂の掃除のいい加減さはやっぱり、男社会だからに違いない。ホントどこに行っても汗臭い男子校の部室みたいなんだもん。お洒落心のかけらもないんだ。きっと消費ってものは、女性がお金を使えたり、女性が喜ぶ物を生産することで活性化するんじゃないかと思うんだどね・・。カートばっかりじゃなくて、目に美しいお菓子とか、食器とか、アクセサリーとか・・。新市街のハッダストリートにはそういう小ぎれいなお店も出来つつあるというが・・。
世にも美しい古い町並みを歩きながら、ここに居心地の良いおしゃれ〜なカフェがあったらどんなに素敵なことか・・と何度思ったことでしょう。でも、10年後もそれが実現していなさそうな所が、この国の良さだったりするのかもしれません。
by umiyuri21
| 2007-01-21 12:25
| 旅行
瞑想やヨガ、インド占星術、創作活動、日々の暮らしや旅など、色々綴っております。基本的に長文です。
by Yuriko
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