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2014年 06月 15日 ( 1 )

インディアン・ヨガライフ 第2ラウンド~Vol.28

「ただ静かにしていなさい。これが方法だ。これなくして、どこにも平和を見出すことはできない。行うことや考えることが、平和を生み出すことはないのだ。」(プンジャジ)

「聖地で出会う人々」

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  ラマナ・アシュラムの周辺には、何件かのツーリスト用のカフェがあって、食べるところには困らなかった。少し歩けば、おいしそうなパンやケーキが並ぶ外国人旅行者御用達の「ジャーマン・ベーカリー」もあった。大抵は吹き抜けの気持ち良い作りになっており、テラスからはアルナーチャラ山が見えたりする。
 インドの普通のレストランのように、さっさと食べてすぐ出てくれ、というスタイルではなくて、旅行者がのんびり過ごせるような雰囲気なのも良い。Wifiが繋がる場所もあり、すっと情報の孤島状態で暮らしていた私は、便利な町の生活に少々カルチャーショックであった。

 何もしなくても良いのだと、リラックスすると、不思議と勝手に色々な事が起こってくるもので、毎日食事をしにレストランへ出向くと、何かしら出会いがあった。一筋縄ではいかないジョシー先生と一緒なので、出会う人も一風変わっている。
 ある日、そうしたレストランの一つで、一人のミステリアスな日本人女性に出会った。その日少し夜の遅い時間にレストランに入ると、客は私達だけ。ウェイターがやってきて「どこから来たの?」と尋ねる。
 相変わらずジョシー先生は何処へ行っても絶対にインド人には見られない。そういう時は済まして「私は日本人、東京から来た。」などと言うのだった。日本人から見たら絶対日本人には見えないのだが、インド人はそれで納得するのだ。
 しばらくすると、さっきのウェイターがやってきて
 「あそこにあなたたちの友達がいるよ。」と指さして言う。
 見ると後方に、60代くらいの日本人の女性が坐っていた。一言二言言葉をかわして、一緒のテーブルで食事することにした。

 彼女の名前はAさん、もう20年くらいマハルシのアシュラムに通っているのだそうだ。どうしてここにやって来たかという、お互いのことを遠慮がちに少し話した後、
 ジョシーに向かっておもむろに「この人も色々見える人ですよね。」と微笑みながら言う。
 「だから、話してることはどうでもよくって、もっと違う所でコンタクトしている感じがします。」
「この人はこのままでいいですよね。変わる必要はない、もうここにも来ても来なくてもいいのかもしれません。」
 うわ~、なんだかこの人も鋭いなあ。ジョシーがこの間言ってたのと同じセリフじゃないか。
 師匠もその言葉にニコニコ笑って「いや〜さすが先生はすごいねえ。」とわかったような分からないようなセリフを言う。なんだか謎の会話。

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 気がつけば、まともに日本人と会話をしたのは、数カ月ぶりだった。アシュラムの情報を色々聞きつつ、楽しい時間を過ごせた。
 帰り際、ジョシーがさっさとまとめて代金を支払ったのに恐縮して、彼女は「それじゃあ、その代わりに足のヒーリングをさせてください。」と彼の足に手を当てて下さった。お礼を言うと、「私がやっているんじゃありません、バガヴァーン(ハマルシのこと)がやってくれるんです。私は時々こうやって使われているだけです。」
 と静かに微笑む。う~ん、このセリフもどっかで聞いたな。妙なことに、ノース・ヴェリヤナードのジョシーの家を追われてから、逆に彼を理解してくれる人に出会う。彼らはみな、私の心の中の微かな疑いや恐れを見透かしたように、似たような事を言ってくれるのだ。


 また、ある時はやっぱりこの町に長く通っている、70代のオーストラリア人女性と仲良くなった。一人で部屋を借りて3ヶ月滞在しているという。「私はOshoのベイビーなのよ。」と笑いながら言う、ファンキーで強気なおばちゃんであったが、年齢から察するに、ヒッピー・ムーブメントのど真ん中を生きてきた人なんだろう。
 彼女もやたらとジョシー先生と気が合って、手をつないだり、ハグしたりしてやけに楽しそうに交流している。
 「あなたたちの手相を見てあげるわよ」と言って掌を覗きこむ。
ああ、この人もやっぱり何か見えるんですね...そんな人しかいないのか、ここは?
 「あら、まあ!あなたの手相ってとんでもないわねえ!」とジョシーの掌を見て大笑いしだした。
 「すごいドリーマーなのね。あははは!でもって、アーティストでもあるわよね。」とのこと。
 ジョシー先生は何も言わずに、うふふふ、と楽しそうに笑っていた。本当に、こういう時の師匠は私と一緒の時とは違って、全然気難しくない、ちょっと変わったカワイイおじいさんに変身しちゃうんだよなあ。
 彼女は次に私の手相を眺め意味深に微笑んだ。
 「ふうん、なかなか興味深いわね。...今度オーストラリアに遊びに来なさいよ。」と言うだけだ。
 もう、やだなあ...一体何を見ているのだか。

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 さらにある朝、起き抜けにジョシー先生は突然言い出した。
 「ほら、あのチベット人のやってるカフェ、あそこに行きたい。」
 「え~と、どの店だろう。チベット人が働いてる店は2件あるけど?」
 「うん、あの人に会ったでしょ。白い服を着た男の人。」
 「ああ、分かった分かった、最初に行ったリトル・チベットのことだね。」
早速「リトル・チベット」に出かけてみると、なんと初日に出会った、イギリス人男性がそこに居た。サリーを着た日本人女性と一緒であった。
 彼はもう明日には本国に帰る予定だという。お互いに再会を喜んで、一緒に朝ごはんを食べることにした。
 サリー姿の日本人女性はシュンニャさんという名で、もう14年もティルバンナマライに住み、ラマナ・アシュラムで働いている方らしい。彼女の事は既に何度か耳にしていたので、こうしてお話できるのは光栄であった。
 シュンニャさんは、アメリカで長いこと暮らし、陶芸家としてキャリアを積んで成功しつつあったが、ある日パパジ(シュリーH.W.Lプンジャジの愛称。ラマナ・マハルシの弟子の一人で、ハマルシの教えを具体的に掘り下げて説き、多くの帰依者を覚醒に導いた。)と出会って人生が一変した。
 「そこで、これまでの人生は全部終わってしまったんです。」
 「もう、それからここまではパパジの用意したレッドカーペットを歩いてきただけですよ。」
 彼女はそれから、パパジのもとで4年を過ごし、パパジが亡くなった後、このティルバンナマライへやって来たそうだ。
 「この町に来た時から、ここが私の最後の場所だって分かったんです。その後、住むようになるまでは何年かかかりましたが...。ここで働くことが私のサーダナ(精神的な修行)なんですよ。」
 と、きびきびした口調で語る、凛とした芯の強そうな女性であった。リトル・チベットの店員に「ここは場所がいいんだから、もうちょとお店を綺麗にしなさい、そしたらもっとツーリストが来るわよ。勿体無いわよ!」と熱心にアドバイスしていた。
 いやはや、本当に不思議な人生が色々とあるものだ。

 古来からインドでは、この世界は「神々の遊戯(リーラー)」のようなもの、という世界観がある。それは巨大なひとつの舞台劇で、神が様々な役を演じて楽しむために作った場所なのだと。だから私たちの人生もまた神々の遊戯の一部にすぎない。
 旅をしていると、時々その言葉が妙に納得できる瞬間に出会うことがある。まるで、人生という広大な空間の真ん中に立って、粛々と演じられる劇に、ただ立ち会わされているような。そんな密度のやたらと濃い時空に放り出されてしまったような瞬間。
 まさに、今もそんな気分であった。誰かがふいに、私のそばにやって来て、耳元で何かをささやき去ってゆく、まるで神々が私の周りで、踊り、歌うように。
 果たして...これが聖地の磁場というやつなのか。
by umiyuri21 | 2014-06-15 22:21 | ヨガ滞在記


旅とヨガとイラストレーション。世界と身体と脳内をめぐる旅。


by 若山ゆりこ

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